2010年9月号

独慎抄

自覚された成長と志─人間の条件としての“智慧”

生き残りのための大命題

見落としがちな人間の条件、それは集団で生きているということ、加えて一人ひとりが成長を目指し、志を持ち続けているということ。人間は、その実験をこの地球において延々と続けてきた。これからも続けていく。何がなければできない、ということはない。すでに人間たる条件は整っているのだから。最も必要なことは、その自覚である。

 

【特集】
『人間の条件』

音楽、人間、そして歓喜−癒しと勇気と希望を紡ぐ芸術
●「フロイデフィルハーモニー」音楽監督・指揮者 宇宿允人
●本誌主筆 井原甲二

「音は人なり」

 「人間は生来、素晴らしいものを備えている。そうして生まれてきたからには、どんな人でも、使命があると思うのです」管弦楽団・フロイデフィルハーモニーの音楽監督であり、指揮者である宇宿允人氏はこう語る。
 オーケストラの練習や指導のときには、楽団員を叱咤する姿がクローズアップされてしまうことも多い氏だが、それは楽員に対する底なしの信頼と愛情、そして音楽に対して決して妥協することのない氏の姿勢の裏返しの姿である。
 いまから五カ月前に腎臓がんの手術をして以来、抗がん剤の治療を続けながら、さらなる飽くなき音楽の探求をする宇宿氏に音楽界の現状と音楽に対する想いを聞く。

 

平和を問い続ける
●映画作家 大林宣彦

問い続ける中で、正義ではなく“正気”を持つことが必要

 昭和13年生まれの大林宣彦監督は自らを「敗戦少年」と言う。敗戦少年として、あの“終戦”にこだわり、平和とは何かを問い続けてきた。すぐに戦争を忘れ、経済成長に狂奔した日本の戦後65年。この間、失われていった大事なものとは何か。そしてその再生に希望は持てるのか。


生の現場、生きる実感
●報道カメラマン 高橋邦典

生きることの実感はあるか!?
 人間の生について考えざるを得なくなる場所を取材してきた高橋邦典氏は、平和や戦争や生の実感について「人が生きる現場」からの視点で捉えることの大切さを訴える。リアルさが希薄になる現代に、高橋氏の写真が投げかけるものは、人間が自分の生きる現場を本当に持っているのかというメッセージであり、人間は本当に平和な世界を達成できるのかという根源的な問いである。インド在住の高橋氏の帰国を待ってインタビューした。


人間とロボットに境界線はない
●大阪大学大学院教授・ATRフェロー 石黒 浩

ロボットも「心」を持てる
 人型ロボット研究の第一人者である石黒浩博士は、自身をモデルにした遠隔操作型ロボット「ジェミノイドHI-1」を発表し、世界中の注目を集めた。石黒博士は言う。「ロボットも心を持つことができる。ロボットと人間に明確な境界はない」。この言葉は私たちに、「人間を人間たらしめているものは一体何なのか」という、人間として生きるうえで最も根源的な問いを突きつける。


「利他」という進化
●京都大学大学院理学研究科教授 山極壽一

ヒトをヒトたらしめたものとは?
 今から約700万年前、ヒトは生き残りをかけて森での生活から草原での生活を選択した。しかし、それは同時にヒトにとって天敵である肉食獣がひしめく過酷な環境を選んだことでもあった。厳しい環境で生き抜くために、人間は多産、家族や共同体といったさまざまなものを身につけていった。そして、あらゆる動物の中で、人間にしか身に付けられなかったもの、それを「利他」という心、行為だと、ゴリラの研究の第一人者・山極壽一氏は言う。ダーウィンをも悩ませた、この「利他」という性質をヒトはどうやって身に付けたのか、山極氏が謎に迫る。


唯、生きるのではだめですか?
●立命館大学大学院先端総合学術研究科教授 立岩真也

身体や頭が動かなくなったら、生きていく意味がないか?
 人間にとって生きやすい社会とはどういう社会なのか。「単純な平等」を原則とし、透徹したロジックでそれを導き出そうとする社会学者がいる。立岩真也氏だ。
 その立岩氏は「人間の条件」といったことを、あまり言わなくてよいのではないかと言う。「人間はこうあるべきだ」「こう生きるべきだ」といった倫理道徳的な言説は、良くも悪くも社会の規範的な価値観となることがある。そしてその価値観の影響が強すぎると、生きることそのものを阻害する要因となる。
 生きづらい現代においては、「人間の条件」以前に、まず「生」そのものが肯定されてよいのではないか−。


高橋史朗の真剣勝負対談<9>公教育は「学び」を再考せよ!
●日能研代表 高木幹夫
●明星大学教授  高橋史朗

 中高一貫の私学への合格を目指す学習塾・日能研は、2000年に入り、教師が教える授業中心の教育プログラムを、「子供の学び」を中心とした教科指導、テスト方式へと移行してきた。低学年向けの体験学習など、子供たちの体験的な学びも支援している。今や、受験攻略のテクニックを提供する場だと見られがちだった塾は、子供たちの考える力を育む場へと大きく様相を変えているのだ。この現実に、高橋史朗氏は、学校と塾は補完関係にあってもいいのではないかという考え方を提起する。高橋氏が迫った日能研の「学び」は、公教育の問題点と、日本の未来へと繋がる学力のあり方を浮き彫りにした。

【好評連載】

 

ヤンキー流教育論 まなこを開け! 現場を見ろ!<3>
小学生は八千件の殺人を目撃する

●参議院議員・自民党政務調査会文部科学部会長  義家弘介

大江戸裁判物語<8>
手賀沼の新田開発

●元最高裁判所長官 山口 繁

文化の遺伝子<8>
日本人の生命観、その土台にあるもの

●元・日本原子力研究所高速炉物理研究室長 黒井英雄

歴史的な波頭に立って<8>
亜州和親会とは、何か

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

父への手紙<9>
白木の机

●作家・財団法人JKA会長 下重暁子

「ノンフィクション・ヒューマンストーリー」
煉獄の彼方ー私の歩いた道<15>

●タイワン建国運動家 郭 振純

いのちの泉<33>
六十五年目の「ナガサキ」に思う

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<31>
八幡神の秘密

●生物学者 長沼 毅

シュトゥットガルトの空から<32>
夏の民族大移動

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官<32>
加瀬俊一とその時代

●外交評論家 加瀬英明

黙さず語らん<67>
厄介人間

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<57>
帰郷

●落語家 三遊亭鳳豊

続・心語余滴<28>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<175>

●写真家 浅井愼平

photo Ryojinhisho<21>
TAWAMURE

      写真家 大橋 弘

 

 

表紙撮影・平野愛智

 




当サイトに掲載されている文章、写真、イラスト等はMOKU出版株式会社に著作権があります。
無断で複製、譲渡、貸与、転載することを固く禁じます。

(C) 2006 MOKU Inc. All rights Reserved.