2010年3月号

独慎抄

「公」という縦糸、「私」という横糸

責任逃れをする当事者・日本人

 本来、「公私」は表裏をなすもので、切り離すことなどできない。にもかかわらず、われわれはそれらを切り離して考え、しかも、「公」と称しながら「私欲」を振りまいていることに気づいていない。そうして作り上げたわれわれの社会、われわれの政治を自ら批判している。つまり、当事者が責任逃れをしている、それが日本国民の姿である。近代日本の経世済民に尽力した渋沢栄一の言葉を借りれば、その姿は「小才子、小利口」。社会は、「公」という縦糸、「私」という横糸で成り立っていることを見抜けば、西郷隆盛(南洲)が言った「自孫の為に美田を買わず」の公徳心が必要な社会であることは自ずと理解できる。

 

【特集】
『「公」に生き、「私」を尽くす』



高橋史朗の真剣勝負対談<3>
戦後教育レジームを突破せよ!
●参議院議員 義家弘介
●明星大学教授 高橋史朗
教育の戦後はまだ終わらない


 
2006年に設置された教育再生会議は、戦後教育の流れを大きく転換する動きを見せた。教育基本法の改正、徳育の教科化、全国学力テストの復活、教員免許更新制の導入、親学の推進……。戦後の思潮の中でタブーとされてきたことである。それらが今、民主党政権によって覆されようとしている。教育再生会議担当室長として改革の中心を担った、ヤンキー先生こと義家弘介氏と、占領下の教育改革を専門家・高橋史朗氏が、日本再生、教育再生のカギについて熱論する。


素晴らしさとおかしさが同居する国
●評論家・拓殖大学客員教授 石 平
現政権を選んだのは国民だという現実

 
1989年6月4日未明に起きた天安門事件をきっかけに、それまで愛していた祖国と精神的に訣別した石平氏は、いまはすでに失われた祖国の伝統文化の神髄を、いまなお営々と伝わるわが国の文化に見いだし、その素晴らしさゆえに自ら日本国籍を取得し、日本の国民となり、「愛日主義者」となった。
 しかしながら、その「愛日主義者」の目に映る現代日本社会は、あまりにも滑稽でおかしな国でもあった……。

 

日本を支えてきたのは志と使命感や!
●LLP航空宇宙開発まいど会長 青木豊彦
仕事の公私が逆転する瞬間


 
まず、自分の仕事ありき。誰もがそう思っている。しかし、自分の仕事を取り巻く業界自体が崩壊しては、自分の仕事どころではない。日本の中小企業が生き残ってきた要因も、実はそうしたことへの配慮があったからだった。青木豊彦氏が、「私」的な仕事意識から、いつしか裏面の「公」的な仕事意識へ変わっていったのは、その狭間で「使命感」が生まれたから。それは「ものづくりの現場に若者を集める」というものだった。ものづくりの世界に夢を与えた東大阪発の人工衛星「まいど1号」の発案者が、「公私」の裏表の入れ替えに必要な「志」「使命感」について語る。


武士道が育んだ日本の「公」意識
●国際日本文化研究センター教授 笠谷和比古
武士道という社会システム

 武士道と聞くと、武士たちだけの崇高な精神論、もしくは封建時代の遺物のように思われがちだが、江戸時代の政治研究を続ける笠谷先生は、「武士道は“個の自立”を促す優れたモデルであり、きわめて今日的なテーマ」だと語る。現代では失われつつある日本独自の「個の自立」と「公」意識は、武士道をバックボーンとして培われ、両立されてきた。これからの日本にどう活かすかという視点で探る、社会システムとしての武士道。


「輿論」はどこへ行ったか!?
● 京都大学大学院准教授 佐藤卓己
時間軸から観る公と私

 戦前の日本では、公的な意見である「輿論」と私的感情である「世論」の使い分けがなされていた。しかし、戦後「輿論」という言葉は新聞・雑誌から消え、同時に公的意見も姿を消していった。いまわれわれ一人ひとりに求められているのは、政治家やメディアの声が「輿論」か「世論」かを見極める思考力であり、メディアリテラシーの獲得であると、京都大学大学院准教授・佐藤卓己氏は言う。その判断基準となるものは「時間軸」を踏まえたものの考え方だった……!?


立憲主義が「公」と「私」を分ける理由
● 東京大学法学部教授 長谷部恭男
生き残りのための公と私の領域の区分

 さまざまな価値観を持った人間同士が生き残っていくために考え出されたことの一つが、憲法に基づいて国の統治を行う立憲主義というシステム。その立憲主義がまず重視するのが「公と私の区別」である。そもそも「私」の領域でそれぞれ生きている人間に「公」を強いることは不自然なことであると分かっていながら、それを強制するのは、やはり、自分だけが生き残ることよりも全体が生き残ることを価値とするからだ。不自然なことをあえて行いながら生き抜くことが、人間の存在には必要なことなのかもしれない。

【連続寄稿】

 

現代ニッポンへの提言<2>
学問の自由と政治家主導

●免疫学者・日本学士院会員 石坂公成

【好評連載】

 

大江戸裁判物語<2>
村々に行きわたっていた自治の仕組み

●元最高裁判所長官 山口 繁

文化の遺伝子<2>
なぜ「文化とは何か?」に答えられないのか

●元・日本原子力研究所高速炉物理研究室長 黒井英雄

歴史的な波頭に立って<2>
日韓合邦から韓国併合へ

●評論家・麗澤大学 松本健一

父への手紙<3>
屏風の絵

●作家・財団法人JKA会長 下重暁子

「ノンフィクション・ヒューマンストーリー」
煉獄の彼方−私の歩いた道<9>

●タイワン建国運動家 郭 振純

photo Ryojinhisho<15>
TAWAMURE

●写真家 大橋 弘

いのちの泉<27>
「悪人」と「悪」のあいだ

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<25>
宇宙が透けて見える場所

●生物学者 長沼 毅

シュトゥットガルトの空から<26>
ゲルダ叔母さんの八十年

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<26>

●外交評論家 加瀬英明

黙さず語らん<62>
情ない日本

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<51>
母ザル

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<53>
人生を奪わない場所

●宅老所「いしいさん家」代表 石井英寿

続・心語余滴<22>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<169>

●写真家 浅井愼平

表紙・撮影 鶴田孝介

 





当サイトに掲載されている文章、写真、イラスト等はMOKU出版株式会社に著作権があります。
無断で複製、譲渡、貸与、転載することを固く禁じます。

(C) 2006 MOKU Inc. All rights Reserved.