2010年2月号

独慎抄

国民的反省力とその反省力が備わった愛国心
国家は国民の品格以上にはなり得ない

 国家は、国民の持つ品格以上の国家にはなり得ないのではないか。つまり、単に政治家を揶揄しているだけでは済まされない。そのために必要なのは、国民一人ひとりの「健全な反省力」だと朝河貫一は言った。朝河は、明治の日清戦争から昭和の第二次大戦までを生き、その大半をアメリカで過ごした世界的な歴史学者である。その朝河が世界の歴史を踏まえて、日本の将来を憂えて今から100年ほど前に『日本の禍機(かき)』で記した日本国民へのメッセージは、現代にも当てはまる。禍機とは「災いの兆し・災いのきっかけ」の意味で、そこに気付くことができるのは、政治家を揶揄して満足している内向きの視点ではなく、アウト・オブ・ボーダーな視点に立った国民的反省力とその反省力が備わった愛国心なのである。

 

【特集】
『アウト・オブ・ボーダー』

【主筆対談】
悠遠なる時空を超えて
まほろばに息づく世界最古の民族音楽「雅楽」
●雅楽演奏家 東儀秀樹
●本誌主筆 井原甲二
自我の入り込む余地のない完成度


 
1000年以上にわたって、楽器も、音も、奏法も変わらない世界で唯一の音楽が「雅楽」である。昔の人々が、風を感じ、星を見、鳥の声を聞き、天地あるいは神々に捧げていたであろう音を、そのまま現代に伝える雅楽は、時空を超えて交感するいのちの響きである。それゆえに、雅楽は人間の自我など入り込む余地のないほどの完成度を持つものでもある。時空を超え、自我を超える、まさにアウト・オブ・ボーダーな雅楽について東儀秀樹氏が語る。


せっかく見えない体に生まれたんだから
●ブラインドサッカー日本代表選手 黒田智成
「ブラインド」とは何か

 
ブラインドサッカーとは、視覚に障害を持つ選手たちが、音の鳴るボールと声を頼りにプレーするスポーツ。昨年末のアジア選手権で、日本は第2位となり、来年の世界選手権への切符を手にした。選手たちは目が見えずともボールを追い、相手をかわし、シュートを放つ。相手と激しくぶつかりながらも、ひるまずフィールドを駆けるその姿は、物事や人とぶつかることを避け、困難や自分自身から逃げようとするわが身を映し出す。「ブラインド」を抱えているのは、一体どちらなのだろう。日本代表のエースストライカー、黒田智成選手が見ている世界とは……。

 

僕は僕以外のものを持っていない
●アーティスト 土田康彦
自己探求を続ける世界的芸術家


 イタリア・ヴェネチアを拠点に活躍するアーティスト・土田康彦氏は、日本人である自分がイタリア人とまったく同じことをやっても意味がない、と言う。1000年の歴史を持つと言われるヴェネチアングラスの伝統を尊重しつつ、抑制の効いた「日本」をそこに醸し出す作品を生み出していく。日本人としてのアイデンティティというボーダーを持ちつつ、同時にそれを超えることのできる柔軟性は、作品にも表れる。常に自己探求を続ける哲学はどのようにして生まれたのか。


「異」の世界との出会い
ラフカディオ・ハーンを小泉八雲へと変えた日本文化
●島根県立大学短期大学部教授 小泉 凡
ハーンが捉えたかつての日本人とは?

 「耳なし芳一」「雪女」などの怪談を代表作に持つ明治の作家、ラフカディオ・ハーン。西洋人でありながら、日本人と同じ目線に立ち、その基層文化を捉えようとした人物である。ハーンが「異」世界・日本に居心地の良さを感じたのは、幽霊譚やアニミズム的信仰などに見る、自然や目に見えぬものと人間との「共生」の思想や文化だった。明治にはまだ日本に残っていたこうした基層文化を現在に取り戻す掛け橋の一つがハーンであると語る、ハーンの曽孫・小泉凡氏に日本人の精神文化について聞いた。


【対談】
「私」を超えられない日本人の器
“危機の本質”を自覚しているか!
●評論家 金 美齢
●拓殖大学学長 渡辺利夫
若者たちよ、「公」の精神に目覚めよ!

 東西冷戦構造崩壊以後、「戦後レジームからの脱却」という課題をおざなりに処理してきたつけが、現在のわが国の閉塞感を生み、国民を内向きな無気力状態にさせ、「いま、目の前にある危機」さえも先延ばしにする鈍感な国民に貶めてしまっている。本当の危機はここにある。
 是々非々一貫の歯に衣を着せぬ発言で知られる金美齢氏と、東アジアの近現代史に造詣が深い経済学者として知られる渡辺利夫氏という二人の教育者が、戦後の危うい民主教育の教条主義に陥った国民を覚醒させ、次代につなぐ人材育成について語り合う。

【新連続】

 

大江戸裁判物語
江戸の庶民は強かった

 

 江戸の裁判といえば、テレビでお馴染みの「遠山の金さん」がお白州で「ハハーッ」とひれ伏す庶民を相手に裁許を下すというイメージを持っておられる方が多いだろう。ところが実際に史料を当たってみると、庶民は相手が御奉行であろうが、堂々と自分の権利を主張していたという。元最高裁判所長官の山口繁氏が、裁判を通してみる江戸庶民の生き方や当時の社会制度など、数百年前の知られざる日本と日本人の実像に迫ります。目から鱗の新連載、乞うご期待。

●元最高裁判所長官 山口 繁

【新連続】

 

文化の遺伝子
「文化」と「文明」、どう違う?

 

 「文化」という言葉は耳にしても「文化とは何か?」と問われると、私たちは明解に答えられない。にもかかわらず、われわれの身体の奥底にしっかりと組み込まれているようにも感じる。いったい文化とは何ものなのか? 文系の枠を超え脳や生物の生態なども含めた多角的な視点から文化の正体へ挑む。

●元日本原子力研究所高速炉物理研究室室長 黒井英雄

【連続寄稿】

 

現代ニッポンへの提言
求められる国際的観点

石坂公成博士の連続寄稿は不定期で掲載します。

●免疫学者・日本学士院会員 石坂公成

 

歴史的な波頭に立って<1>
維れ新たなり

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

【好評連載】

 

高橋史朗の真剣勝負対談<2>
現政権で教育は変わるか?
民主党政権の教育政策の意図を問う


 就任の会見で「教育は国家の根幹にかかわるもの」と発言した川端達夫文部科学大臣。しかし、マニフェストが示す民主党の「子育て・教育」政策は家庭の経済負担の軽減と制度面の改革で、教育理念が見えてこない。戦後60余年、朝令暮改の教育改革から本質的な視点での国家の根幹たる教育を考えるときに来ている今、高橋史朗氏が、過去最高となった中学生の暴力や、教員免許更新制や学力テストの見直し、高校教育の無償化、日教組との関係など、民主党政権の教育政策に切り込む。

●文部科学大臣 川端達夫
●明星大学教授 高橋史朗

父への手紙<2>
長靴とマント

●作家・財団法人JKA会長 下重暁子

「ノンフィクション・ヒューマンストーリー」
煉獄の彼方ー私の歩いた道<8>

●タイワン建国運動家 郭 振純

いのちの泉<26>
「悪人」と「悪」のあいだ

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<24>
「右向き」文化、「左向き」文化

●生物学者 長沼 毅

シュトゥットガルトの空から<25>
黒人とバスケットボール

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<25>

●外交評論家 加瀬英明

黙さず語らん<61>
陽気な喧嘩は理性である

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<50>
親子喧嘩

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<52>
目利きで売る本屋

●「往来堂書店」店主 笈入建志

続・心語余滴<21>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<168>

●写真家 浅井愼平

photo Ryojinhisho<14>
TAWAMURE

●写真家 大橋 弘

表紙撮影 鶴田孝介

 





当サイトに掲載されている文章、写真、イラスト等はMOKU出版株式会社に著作権があります。
無断で複製、譲渡、貸与、転載することを固く禁じます。

(C) 2006 MOKU Inc. All rights Reserved.