2009年5月号

独慎抄

自立という命題に、人は生きねばならぬ
たった一度の人生なのだから

 「鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ 怒涛の海を 飛びゆく鳥のように 人も混沌の世を 生きねばならぬ……」魂の詩人と呼ばれた坂村真民さんは、そのような詩を残している。自立して生きていかねばならないのは、鳥も人間も同じ。生まれたときから誰にも与えられている命題といっていい。しかし、それは決して何物かからの自立や独立ということではない。自分を律して自己を確立するなかで自立していくしかない。たった一度の人生、私に与えられた命題、それを人生の本義として自覚できているだろうか。「つらい経験をすればするほど、人はそこから学び、成長する」と、死を見つめ続けたエリザベス・キューブラー・ロスは語っている。自立と成熟、私たちは私たちの命題を生きねばならぬ。

 

【特集】
『自立と成熟』

【ビジュアル】
風姿花伝
●写真 大橋 弘

【対談】
稽古照今のこころ
●遠州茶道宗家13世家元 小堀宗実
●本誌主筆 井原甲二
グローバル化時代の日本的自立と成熟のすすめ


 村田珠光から武野紹鴎を経て、千利休によって大成された「茶の湯」の道を「破格」という芸術性をもって極めた古田織部。その織部を範としながら、利休の茶の湯にさかのぼり、先人たちの知恵や心を円融無碍に取り込んで、茶の湯を総合化し、会席・濃茶・薄茶という現代に続くスタイルを確立させた江戸初期の茶人・小堀遠州。その業績を読み解きながら、現代を賦活させる稽古照今の叡智を探る。


江戸の叡智
●文化人類学者 波平恵美子
自立と成熟を促した江戸のシステムと民俗慣行

 かつての日本には、庶民の一人に及ぶまで大切に扱われ、格差を格差のまま仲間として受け入れる助け合いの精神が、社会の隅々に行き届いていた。そして、すべての子どもは、いくつもの通過儀礼や土地に伝わる制度を通して一人前に育っていった。一人の人間を育てるために縦横に張り巡らせた見事なまでの制度と、江戸という社会の叡智をひもとく。

 

【コラム】
日本における人生儀礼

 

かつて日本で行われてきた誕生から15歳までの通過儀礼を分かりやすく示す。

戦後教育が見失ったもの
 ●首都大学東京前学長・工学博士 西澤潤一
思考を欠落させた暗記偏重教育を改めよ

 「暗記偏重型」の教育が過熱しすぎた戦後。「ミスター半導体」「光通信の父」と呼ばれた科学者・西澤潤一氏は自然科学が目の前の現実を凝視し試行錯誤しながらさまざまな手法を探っていくように、教育も目の前の「人そのもの」を凝視し、各々が持つ才能を引き出すという視点が必要であると言う。「知識量を問う」ばかりではなく「思考させる」教育へ。教育のありように思いを馳せ続けてきた西澤氏が教育の本質を語る。


今、求められる父親の力
●京都大学霊長類研究所教授 正高信男
子供の社会化は父親次第!

 キレる子供、引きこもり、パラサイト……これらの言葉に代表されるように、子供や若者が変わってしまったと嘆く声がよく聞かれるが、変わったのはむしろ親や社会ではないだろうか。長年赤ちゃん研究をしてきた正高信男氏は、今の子育ては母親の存在に重きを置きがちだが、父親にこそ子供の社会性を養う力があると語る。では一体、現代の子育てに欠けているものはなんだろうか? 父親がすべきこととは?


私らしい“自律”−妻らしく、母らしく、女らしく
●共立女子大学名誉教授 木村治美
日本的「個」のあり方と成熟

 戦後60年にわたる教育の中で、私たち日本人は個性を尊重する重要性を強調し続けてきた。だがその「個」は、共同体の秩序よりも個々の「我」を優先する単なる利己主義ではなかっただろうか。女子大学の教壇から戦後教育の在り方を見つめ続けてきた木村治美氏に、私たちが精神風土として育んできた日本的「個」のあり方と、そこから生まれる人の成熟について伺う。


【特別企画 東京大学最終講義】
「比較惑星学、アストロバイオロジー、そして地球物理学」
−惑星科学者が見つめる宇宙、地球、人類の未来
●千葉工業大学惑星探査研究センター所長 松井孝典
われわれはどこから来て、どこへ行くのか

 1986年に発表した、大気と海の起源と進化を論じた「水惑星の理論」で世界的な注目を集め、日本の比較惑星学、およびアストロバイオロジー、地球物理学の先駆者として独自の理論を展開してきた松井孝典博士の東京大学での40年におよぶ教育・研究生活を総括した最終講義録。時空という宇宙を貫く壮大な学問を志し、「われわれはどこから来て、どこへ行くのか」という人類の命題を探求する博士が語る、地球、人間圏という文明、そして人類の未来とは。

【好評連載】

 

TAWAMURE─photo Ryojinhisho 5

●写真家 大橋 弘

RINGО白書<11>
Independency(自立と独立)・その二 自己中心的人生からの脱却

●一般社団法人「日本家庭教育再生機構」
 理事長 長田百合子

木下久雄の「ゴルフ・実践人間学」<13>
人の章 精神力編
安田春雄─ゴルフの神髄は生死透脱にあり

●日本プロゴルフ協会(PGA)理事
 木下久雄
●コーディネーター
 ジャーナリスト・植田剛彦

いのちの泉<17>
断食と長寿─妄想に遊ぶ

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<16>
たたら、男たちの火遊び

●生物学者 長沼毅

シュトゥットガルトの空から<17>
ドイツ人とリズム感

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<16>

●外交評論家 加瀬英明

高橋史朗の第三の教育論<70>
自治体が制定する「子ども権利条例」の問題点

●明星大学教授 高橋史朗

文明の新地平<28>
中国のグリーン・ニューディール?

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

黙さず語らん<52>
ストレス解釈

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<41>
チョーク

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<48>
「繋がり」を生む漆塗り

●漆工房「牧門堂」
 塗師 牧野 浩子

続・心語余滴<12>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<159>

●写真家 浅井愼平

 

 





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