2009年4月号

独慎抄

精神的風土を涵養した「語られず書かれざる掟」
「義徳」は人間の品格の土台

 新渡戸稲造は「道徳的原理の掟」である武士道は、語られることも書かれることもない掟である、と言う。また、福沢諭吉は100年以上も前に、文明の本旨は「国民の智徳の進歩」であると述べている。アメリカ型グローバリゼーションの崩壊が明らかにしたのは、私たちが義、道徳、智徳といった人間の品格の土台を捨てて物質文明に同化していたということだった。そのような人間の品格の土台を『MOKU』では「義徳」と呼び、義徳を喪失した社会の精神風土をどのように養っていくかを考える。

 

【特集】
『義徳の喪失』

【ビジュアル】
桜守(さくらもり)−第十六代 佐野藤右衛門 
●写真 岡田克敏

【対談】
市場原理主義(パクスアメリカーナ)の終焉
−真のグローバリゼーションが始まった!

●経済学者・早稲田大学教授 榊原英資
●本誌主筆 井原甲二
「ミスター円」が語る金融危機の本質


 生き馬の目を抜く国際金融の舞台で数々の修羅場を経験してきた「ミスター円」こと、榊原英資氏が読み解く金融危機の本質とは何か。
「米国経済の没落の始まりであり、真のグローバリゼーションの時代の始まりだ。現在の危機もその一つのマイルストーンだろう。これからは従来の常識は通用しなくなる」と分析する榊原氏の胸中に過ぎる「新しい世界構造の現実」と「日本人の再生」へのビジョン。


どういう「つもり」で患者の前に立つのか

−リスク、責任、義務から逃げない医療の復興
●九州大学大学院医学研究院教授 信友浩一
制度やお金では補えないもの


 リスクや責任や義務から逃げる医療と、それを見逃す患者。この関係は日本のいたるところで起こっている。日本のさまざまな問題の根幹には「逃げ」がある。そして、被害者意識、見返り意識、他者への不信感、といったことが原因であるにもかかわらず、制度やお金で補おうとする。が、人と人との関係性の再構築を抜きにして、問題の解決はありえない。その関係性を「つもり」の問題であると信友浩一教授は言う。

 

感謝のこころ、絆のこころ
●慈眼寺住職・大峯千日回峰行大行満大阿闍梨 塩沼亮潤
かけがえのないものに囲まれて


 親が子を思い、子が親を思う。この素直なこころのはたらきを絆という。大阿闍梨・塩沼亮潤師の言葉を借りると、それこそが「信仰の結晶」である。自分がここにあること、家族に支えられていること、かけがえのないものが私たちを取り巻いていること、そうしたことへの感謝が、実は私たちを救ってくれる。


人間の器を養う「江戸しぐさ」
●江戸しぐさ語りべの会主宰 越川禮子
「お心肥(しんこやし)」は人間の生きる知恵

 江戸しぐさには、「お心肥」という心得がある。それは、体だけでなく心を肥やす、自分で見て聞いて、考えて感性を磨いていくことが大切だと説く。江戸しぐさは、遠い昔の古臭いマナーなどでは決してない。むしろこれからの時代に必要な子育ての知恵や生きる知恵がたくさん詰まっているのだ。江戸しぐさの伝承者、越川禮子氏が教えてくれた、殺伐とした世の中を変える手立てとは。


ルールをつくった人間(サル)
●京都大学大学院教授 山極寿一
サルとヒトとの違いとは?

 サルと同じような身体を持ちながら、独自の社会や文化を築いてきた人間。明文化されてはいないものの、その背景には世界中のどの文化にも普遍的なルールがあり、それを身に付けることで「共感すること」を可能にし、他者を思いやりながら共同体で生きるという知恵を得てきた。しかし、人間はいま集団で生きることを崩壊させつつある。サルと人間とを分けたこうした特徴を失ったとき、人間はどうなってしまうのか。人間を人間たらしめている「ルール」とは何かを考える。


オバマ・パラダイム−開かれた民主主義への回帰
●日本学士院会員・ラホイヤアレルギー免疫研究所名誉所長 石坂公成
「初の黒人大統領が米国に誕生した」意味

 アメリカでの学究生活が35年余に及んだ免疫学の世界的権威・石坂公成氏は、いまなお自然というプリンシプルに対して限りなく誠実であろうとし続ける冷徹な科学者である。
 石坂氏の米国新大統領・オバマ氏に対する期待と背景。そこから浮かび上がってくる、現代社会の根底に横たわる幻想と虚偽に満ちた傲慢な「人間の価値観とその前提」。そして、これまでの前提を打破し溌溂とした国風を賦活させるための「視点・思考・行動へのヒント」。

【好評連載】

 

TAWAMURE─photo Ryojinhisho 4

●写真家 大橋 弘

RINGО白書<10>
Independency(自立と独立)・その一 理想の子育て物語

●一般社団法人「日本家庭教育再生機構」
 理事長 長田百合子

木下久雄の「ゴルフ・実践人間学」<12>
人の章 精神力編
杉本英世 日々是鍛練─王道は常に日常にあり

●日本プロゴルフ協会(PGA)理事
 木下久雄
●コーディネーター
 ジャーナリスト・植田剛彦

いのちの泉<16>
「遺品整理業」と孤独死

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<15>
偉人たちが交叉した秘境

●生物学者 長沼毅

シュトゥットガルトの空から<16>
世界一大きい風車

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<15>

●外交評論家 加瀬英明

高橋史朗の第三の教育論<69>
【特別対談】
「己」から始まる人づくり、国づくり

●ゲスト 日本青年会議所
 第五十八代会頭 安里繁信
●明星大学教授 高橋史朗

日本全体の中で1%程度の経済規模しかない沖縄から、初めて日本青年会議所の会頭が誕生した。倒産寸前だった会社を短期間でグループ16社、グループ年商約200億円を誇る企業群に育て上げた安里繁信氏、39歳。自ら構想し、書いた運動方針には「真日本建国」という言葉が目立つ。経済もモラルも教育も落日の様相を色濃くするこの日本で、「全ての変革は己から始まる」という透徹した意志に、教育学者の高橋史朗が迫る。

文明の新地平<27>
グリーン・ニューディールの日本的方法

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

黙さず語らん<51>
仕事の原点

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<40>
下駄

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<47>
「音」からの暮らし考

●福島大学准教授 永幡幸司

続・心語余滴<11>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<158>

●写真家 浅井愼平

表紙撮影 岡田克敏

 





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