2008年12月号

独慎抄

異質を常態として受け容れるアメリカ
オバマ大統領を選んだ主体性

 アメリカは異質を受容しながら形作られてきた社会である。さまざまな人種の文化や価値観を受容し乗り越えていくために、自由と民主主義を核としてきた。しかし、それでも限界があった。ところが、アメリカ国民はついに、それを実現した。アフリカ系アメリカ人の大統領就任であった。オバマ氏を次期大統領に選出したのは、深刻な問題を抱えるアメリカ国民の期待でもある。“CHANGE”のために積極的に異質を受け容れる寛容さと品格をそこに見ることができる。政権だけを求める日本の政治家の姿が霞んでいく。「異質」「疑問」を克服するのは主体的な意志である。

 

【特集】
『疑問力』

なぜ日本人は幼稚になったのだろう
−疑問なき国家の勇気喪失
●作家 曽野綾子
勇気なき国民は滅ぶ

 本当の“貧しさ”を知らず、そのことに疑念さえ抱かず、ものを深く考えることもしなくなった幼稚な日本人に未来はあるのか−。四半世紀にわたってインドや中近東、アフリカの最貧国を訪れ、その厳しい実態を経験した曽野綾子氏は、その答えを「子供に疑問する力を持たせ、自分で考える力を養わせ、ひいては、日本人を再び賦活する“勇気”をもたせること」こそが最も基本的な方法であると説く。現代社会に警鐘を鳴らす直言!


疑団に耐え、自己(おのれ)の根源を深耕する
●禅僧 南 直哉(みなみ・じきさい)
生きることの意味へ導く疑問

 人間は、本当の問題を隠すことがある。本当の問題を突き詰めていって「自己」の問題にたどり着く前に、我執という囚われの「欲」が問題の本質をすり替えてしまうのだ。決定的な疑問や問いを抱え続けるには忍耐が必要で、この苦痛に耐えられないかぎり、自分自身の問題の核心には触れることができない。人は生きている以上、疑問を持つことは避けられないものではあるが、それを問い続けること、そのことに「賭ける」ことが大事である。疑問を持つことが、生きることにどのような「効果」があるのかないのかというようなレベルではない。人間にとって重要な生きることの「意味」の深耕につながるような疑問こそが、人間にとって重要な本当の疑問である。

 

正義の育たない国・日本
●カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 中村修二
人任せにしない生き方


 日本はずっと、永遠のサラリーマンを育てる教育から脱却しようとしない。アメリカのように自分の興味を追求していく教育ではなく、覚える教育。その違いは、自信の違いとなって表れる。その自信は、「私にとっての正義」を確かなものにする。アメリカの裁判は正義を追求しようとするが、日本の場合はルールを守ることを優先する。そうした洗脳された状態では疑問も生まれてこない。人任せにしないで自分で生きようとすることが原点にあるか。


突破口は伝統の中にある
●日本ニュービジネス協議会連合会会長・株式会社はせがわ会長 長谷川裕一
先義後利がニュービジネスの秘訣

 「おててのしわとしわをあわせてしあわせ、なーむー」のコマーシャルで親しまれている株式会社はせがわ。九州の小さな仏壇店を株式公開に持ち込み、全国115カ所に支店を持つ企業へと発展させた。その実績を買われて、会長の長谷川裕一氏は今年6月、経済産業省所轄の経済4団体の1つ、日本ニュービジネス協議会連合会の会長に抜擢された。日本人が培ってきた心こそ、これからの経営に欠かせないと語る長谷川会長に、新しい経営の視点について聞く。


国民の「依存」、官僚の「餌付け」
●東洋大学教授 高橋洋一

依存しつつバッシングする愚かさ

 国民なのだから情報は与えられて当然。正しいことを教えないのはおかしい。そう国民やメディアが考える前提は、「依存」。しかし、依存しつつバッシングするいびつさが見える。知ろうとしていない、現状に満足している、それが本当の姿。官僚は国民から選ばれたわけではないのだから、正しいことを言わなくても辞めさせることはできない。国民が選ぶことのできるのは政治家だけ。幻想で物事を捉えないためには、具体的に、根本原理で考えること。そうしてまともな国にしていくしか方法はない。


身体に耳を澄ませ、言葉と出会う
●詩人・作詞家 覚 和歌子

感覚の目盛りを細かくしていく

 私たちはどこまでこだわって自分が感じたことを言葉にしているだろうか。詩人であり作詞家でもある覚和歌子氏は、自分の身体の声に耳を傾けながら、紡ぎ出す言葉と自分の感覚とにズレがないか何度も何度も確認し、身体に言葉をフィードバックしていく。こうして感覚の目盛りをどんどん細かくしていくことは、自分は何ものか、誰なのか? と問い続けていくことでもある。

【好評連載】

 

プリンシプルからの視点<5>
アメリカの制度は何故日本では成功しないのか?

●日本学士院会員
・山形県教育委員会委員長 石坂公成

RINGО白書<6>
“人権派”に負けない日本の教育を!

●NPО「家庭教育再生機構」
 理事長 長田百合子

木下久雄の「ゴルフ・実践人間学」<8>
人の章 知力編
島田幸作−人間を味わい尽くした苦労人ゴルファー

●日本プロゴルフ協会(PGA)理事
 木下久雄
●コーディネーター
 ジャーナリスト・植田剛彦

いのちの泉<12>
現代の阿国−長嶺ヤス子の覚悟

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<11>
みすゞの詩と「日本人の原郷」

●生物学者 長沼毅

シュトゥットガルトの空から<12>
危険な郷愁「オスタルギー」

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<11>

●外交評論家 加瀬英明

現代養生訓<最終回>
冬は生活エネルギーを潜伏閉蔵する時季

自然美システム研究所代表 萩原俊雄

高橋史朗の第三の教育論<66>
脳科学は子供の健全な発達に寄与できるか

●明星大学教授 高橋史朗

文明の新地平<24>
民族の「記憶」(番外編)

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

黙さず語らん<47>
古典を選ぼう

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<36>
敬礼

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<46>
“生きることの根っこ”を探しに

●森の“聞き書き甲子園”
 実行委員会事務局 吉野奈保子

続・心語余滴<7>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<154>

●写真家 浅井愼平

【歴史エッセイ】

 

日本の名山 その歴史と文化<最終回>
その他の名山

●作家・文芸評論家 高橋千劔破





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