2008年11月号

独慎抄

自然と芸術の間の通訳者
常識や前提を疑問に変えていく

 レオナルドは、人間が「常識」や「前提」として捉えているものの多くが「幻想」であることを知っていた。そのため、自然や人間や現象の真実や本質に「疑問」という入口から向かっていった。そうした目を持ちながら表現する者としては、孤独であり自己と語り続け苦悩することも当然のことと引き受けながら、画家であることを貫いた。「自然と芸術との間の通訳者たらざるをえない」というレオナルドの覚悟は、「人間の天才は……自然よりも美しく容易かつ簡単な発明をすることは絶対にないであろう。なぜなら自然の発明の中には何一つ過不足がないからである」という確信によっている。

 

【特集】
ダ・ヴィンチ−探究の眼差し

プロローグ−甦る「真実」への眼差し
●監修 学習院大学名誉教授 裾分一弘
「万能の天才」は何を見ていたのか

 ルネサンスを代表する画家レオナルド・ダ・ヴィンチは、工房の職人とみなされていた画家の地位を「芸術家」に高めました。画家としての作品数は非常に少ない一方で、彼は、光学、生理学、解剖学、天文学、力学、気象学、水利、地質、動植物等々、その関心を実に多くの分野に向けています。彼の眼差しはいったい何をとらえようとしたのか。レオナルドが生きた時代背景や、その生涯、彼が遺した絵画作品を解説しながら、特集へといざないます。


勤勉と孤独と清貧と
●学習院大学名誉教授 裾分一弘
8000ページの手稿が語るレオナルドの実像

 レオナルドが絵画作品のほかに残した「もう一つの遺産」−。それが膨大な量にのぼる素描・素画、考察、雑記メモ(手稿)である。現存する手稿のすべてを読解し、生涯を懸けてレオナルドの実像を追い続けてきた学者が、レオナルドが「万能の天才」といわれるゆえんや、未完の作品の多い理由、『モナ・リザ』と理想の女性、彼にとって神とは何だったのかなど、人間レオナルドの視点で迫る。

 

科学技術の先駆者
●国立科学博物館名誉研究員 佐々木勝浩
時代の先取りをした思考の根底には常に「調和」の理論があった!?


 レオナルドの手稿の中でも、最も多いとされる工学関係のスケッチ。現代の社会においてなくてはならないボールベアリングやゼンマイなども、約500年前にその手稿に遺していたことが分かっている。当時の最先端の機械工学に大変な興味を抱いていたレオナルドは、先人の知恵に学び、それを展開し、新たな機械についてのアイデアを数多く書き留めている。
 また、機械工学のみならず多岐に渡った彼の思考の根底にあるのは、自然や宇宙の随所に写し出された「調和」ではなかったかと、国立科学博物館名誉研究員の佐々木勝浩氏は語る。


レオナルドの美の原点─人体比例と遠近法
●美術史家 向川惣一
今日の美術が見失った数学的思考

 世界的ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』の映画化で、レオナルドが作品に込めた秘密に脚光が当てられている。この推理小説の中で最初の暗号として出てくるのが「ヴィトルヴィウス的人体図」とも「人体権衡図」とも呼ばれる素描。いまから20年も前に、レオナルドがその図に込めた幾何学的暗号を読み解いていた日本人学者が、レオナルドが素描や絵画に込めた数学的・幾何学的メッセージを説く。


現代のダ・ヴィンチを育てる
●元教師・栃木市教育委員会参事 太田惠美子

対象を全身で捉え、自分を見つめ、自ら立つ教育

 レオナルド・ダ・ヴィンチからわれわれが学ぶべきは、対象への眼差し、凝視する力である。そうした力は誰にでも備わっていると信じて、教育に取り組んできた太田惠美子氏は、長年の教育現場からあみ出された独自の手法によって、多くの子どもたちが自然や世界の現状を直視し、過去や人類の遺産に学び、自らの生き方を確立してきた。その教育に耳を傾ける。


「前提を疑え! 自立せよ!」
●栃木市長 日向野義幸
●とちぎ蔵の街美術館館長 松田重昭

住民に「探究のまなざし」を

 「地方分権」が真にその意味するところを実行できるとすれば、国への隷属から離れるしかないが、長い依存体質から抜け出すのは容易なことではない。しかし、地方が地方として自立意識を持つ以外に、生き残るすべはないことも明らかになってきた。そこで、「当たり前」「依存」の体質を「なぜ?」で打破しようと考えたのが栃木市の首長・日向野義幸氏。そのためにはレオナルドが遺してくれた「探究のまなざし」に住民に触れてもらうことが必要だと考えたのが同市のとちぎ蔵の街美術館館長・松田重昭氏。2人は、「エコ・ミュージアム」「栃木学」という姿まで思い描いている。

【好評連載】

 

RINGО白書<5>
「わだつみのこえ」に促されて

●NPО「家庭教育再生機構」
 理事長 長田百合子

木下久雄の「ゴルフ・実践人間学」<7>
天の章 知力編
中嶋常幸ーゴルフ界を復活させる男

●日本プロゴルフ協会(PGA)理事
 木下久雄
●コーディネーター
 ジャーナリスト・植田剛彦

いのちの泉<11>
駅弁とワンカップ

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<10>
秋の蒜山を逍遥する

●生物学者 長沼毅

シュトゥットガルトの空から<11>
空飛ぶ安ワイン ボジョレー・ヌーヴォー!

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<10>

●外交評論家 加瀬英明

現代養生訓<11>
老化と長寿養生法

自然美システム研究所代表 萩原俊雄

高橋史朗の第三の教育論<65>
脳科学が徳育を変える

●明星大学教授 高橋史朗

文明の新地平<23>
限界集落とは何か

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

黙さず語らん<46>
人生は興味が第一

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<35>
紙人形

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<45>
「星の視点」を自分の中に

●山梨県立科学館天文担当学芸員
 高橋真理子

続・心語余滴<6>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<153>

●写真家 浅井愼平

【歴史エッセイ】

 

日本の名山 その歴史と文化<102>
甲武信ケ岳 三大河川の源流

●作家・文芸評論家 高橋千劔破





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