2008年10月号

独慎抄

道元と花鳥風月
死生観と美意識の象徴

 そもそも日本人にとっては、大自然のはたらきそのものをあるがままに見ること、あるがままに受け止めること、あるがままに表現すること、それが「花鳥風月」と称されることであった。自分自身の死生観も、美意識も、趣の味わいも、花鳥風月という表れ方と表裏の関係にあった。それを道元は数々の和歌を通して言い表し、日本とは何か、日本人とは何か、について考えさせる。

 

【特集】
花鳥風月

[特集]花鳥風月─日本人の美意識と死生観
【ビジュアル】 山水幽玄

日々是”花鳥風月”─侘び寂びの死生観
●茶道裏千家家元 千 宗室
ありのままの自然に「花鳥風月」を感じる

 「花鳥風月」という言葉の源は「ありのまま」ということだと、茶道裏千家家元・千宗室氏は語る。遠くには山、野原には薄(すすき)がたなびき、満月が出ている。このように自分の理想の「花鳥風月」を探したのでは、「花鳥風月」との出会いはない。ビルの谷間にはビルの谷間の、里山には里山の「花鳥風月」がある。まずは、選り好みせず自分の足元に目を向けること、それがあらゆるところにある「花鳥風月」との出会いの始まりとなる。


花は無心に語り尽くす
●花人 川瀬敏郎
日本人はなぜ花をいけるのか

 日本の自然は、日本人の心の記憶のすべてが書き込まれている壮大なファイルであり、花をいけることによって書き込まれたファイルから自分自身の姿、日本人の美意識、宇宙のありよう、といったものを取り出して表現することができる。そのような花がいけられたとき、花は見たけれど何の花であったかは思い出せないような、花の奥にある神聖なものだけが残っている。花の本質は、人と自然との区別さえない神仏の意志である生き方を表していることにある。

 

だからニッポンは面白い
●拓殖大学教授 呉 善花
不思議の国の高度な文化を味わう


 「いまの若者の中にも日本の心は脈々と生きている。むしろ日本の文化を渇望している」と言い切るのは、韓国人女性の呉善花さん。日韓の文化的な差異に驚き、葛藤しながらも、日本の神髄に流れる精神世界を探究してきた呉さんの言葉は、日本人に希望を与えてくれる。呉さんがマンションの中に造った茶室や庭園は本誌初公開。


大自然をなぞらえる
─色の復興と人間性の回復
●染色家 吉岡幸雄
歴史を色でひもとく

 『源氏物語』を色の物語として読むと、当時の人々が二十四節気・七十二候の細かな時の移ろいを感じて暮らす豊かさを持っていたことが見えてくる。襲(かさね)の色使いに桜や紅葉や七草などを表している。また、江戸時代の人々が数十種の茶色や薄墨色を創り出していたのは、政治的統制を表面的には受け入れながらも色を楽しみながら纏(まと)っていたことの象徴でもある。季節の移り変わりとともに色をなぞらえながら生きていくことには、表層的な思想に流されない安心感がある。


「矛盾した生」を輝かせる美意識
●作家・建築家 宮元健次

滅びへ向かう生なるがゆえの美意識

 人間は誰もが生まれた瞬間から死に向かっている。このネガティヴさを美という次元へ昇華させポジティヴさに変換した日本人。それを可能にしたのは、日本人の根底にあった大自然と結びついた「優美」という美意識。「幽玄」も「わび」も「さび」も「きれい」も、すべて「優美」を根源として重層的に形成された日本的美意識。神仏習合という日本独特の感性がその重層性を可能にしたことを、日本建築の歴史や謎を解説しながら考察する。

【好評連載】

 

RINGО白書<4>
「道」という名の心の教育

●NPО「家庭教育再生機構」
 理事長 長田百合子

木下久雄の「ゴルフ・実践人間学」<6>
天の章 気力編
樋口久子ー天性を拓いた壮烈な闘争心

●日本プロゴルフ協会(PGA)理事
 木下 久雄
●コーディネーター
 ジャーナリスト・植田剛彦

いのちの泉<10>
山折流「雨ニモマケズ」の読み方

●宗教学者 山折哲雄

時空の旅人<9>
北極圏の中心で裸になる!

●生物学者 長沼毅

シュトゥットガルトの空から<10>
怖いもの知らず?

●作家 川口マーン惠美

二十世紀最後の武士(もののふ)外交官
加瀬俊一とその時代<9>

●外交評論家 加瀬英明

現代養生訓<10>
重陽の節句に学ぶ菊花養生法

自然美システム研究所代表 萩原俊雄

高橋史朗の第三の教育論<64>
いま問われる教育委員会の役割

●明星大学教授 高橋史朗

文明の新地平<22>
環境の汚染と浄化

●評論家・麗澤大学教授 松本健一

黙さず語らん<45>
日常と非日常

●作家 藤本義一

にっぽん人情小噺<34>
龍ちゃん

●落語家 三遊亭鳳豊

未知なる輝き<44>
歯医者さん、街へ出る!

●ふれあい歯科ごとう代表 五島朋幸

ザ・ビジネス・ドメイン
農業に吹く新たな風
―総合人材サービス・パソナグループの挑戦

●パソナグループ、青森県南部町の皆さん

続・心語余滴<5>

 

【グラビア】

 

COSMOGRAPHY

●画家 千住 博

日に晒され風に吹かれ<152>

●写真家 浅井愼平

【歴史エッセイ】

 

日本の名山 その歴史と文化<101>
大台ヶ原山 魔の山の狼

●作家・文芸評論家 高橋千劔破

表紙 大橋 弘

 





当サイトに掲載されている文章、写真、イラスト等はMOKU出版株式会社に著作権があります。
無断で複製、譲渡、貸与、転載することを固く禁じます。

(C) 2006 MOKU Inc. All rights Reserved.