2008年4月号
独慎抄
自らを尽くして生きる人への無上の良薬「試練」

 苦しみを主体的に受け入れる生き方

 いのち(生きること)でさえストレスに感じてしまう人がいる。そういうときが人間にはある。しかし、ストレスから逃れることはできるのだろうか。自分の都合に合わせた人生などあるのだろうか。主体的に生きる者には、自分を苦しめるものも主体的に受け取ることができるはずだ。矛盾や無駄、無価値や無意義を含めて生きることにおいては最高のチャンスと理解できているかどうか。
【特集】
ストレス
寛仁(ともひと)親王殿下に聞く
皇室とまつりごと
(正しくは寛の見の部分に「、」入れる)
●聞き手 高崎経済大学教授 八木秀次
見えない糸に結ばれる皇室と国民の絆

 「ヒゲの殿下」の愛称で国民から親しまれている寛仁親王殿下は、「皇籍離脱」発言や、著書で自らの食道がんの闘病体験を吐露するなど、世間の注目を集めてきた。
 また、伯父である故・高松宮宣仁(のぶひと)親王殿下の影響を受け、早くから福祉を中心とした公務に積極的に取り組まれてきたが、その根底には「皇室の仕事はまつりごと(政)に始まる」という皇室のあり方の本質がある。
 乾いた政治が切り捨てようとする陽(ひ)の当たらない隙間にも慈しみの光を注ごうとするまつりごと(政)の原風景が、ここにある。
 寛仁親王殿下が奮闘されてきた福祉事業、それは皇室のまつりごとの本質を見事に象徴するものだった。まつりごと(政)という見えない糸で深くつながれた皇室と国民。そのまつりごと(政)と、まつりごとの象徴としての福祉の意味を考える。。


リズム運動でストレスに克つ!
「セロトニン神経」活性の魔術
●統合生理学者・東邦大学医学部教授 有田秀穂
ストレスに動じない脳をつくる

 現代社会が「ストレス社会」であるという言い方には疑問がある。ストレスは生きている限り常に何かしら感じるものだ。ストレスが強くなった社会ではなく、脳や身体が弱くなっているのだ。少々のストレスには動じないためには、脳内のセロトニン神経を鍛えることが有効だ。太陽の光を浴びてリズム運動をすればセロトニン神経が活性化する。


なぜ「うつ」は増えたのか

不安定な個人を生む現代社会の構造

 いまや、日本人の15人に1人が一生に一度は経験するといわれる「うつ」。近年急増するうつは、その大半が心理的ストレスに起因とするものであるという。しかし、人類の長い歴史の中で、格段に安全で豊かな生活を享受できるようになり、精神の解放と個人の自発性が重んじられるようになったはずの社会で、うつが増えるのはなぜなのか−。
精神科医として臨床に携わりつつ、薬物療法一辺倒の現代の精神医療の在り方に果敢に疑問符を投げかけてきた片田珠美氏に、ストレス社会と喧伝される現代社会の根底にある病理構造を聞く。


葛藤は人生の必需品
●精神分析者・和光大学名誉教授 岸田 秀
死の恐怖から逃れる方法

 最大のストレスは死の恐怖。それは、永遠に自我を持ち続けたい願望と、人は必ず死ぬという現実の自覚の間で葛藤していることにほかならない。一元的、観念的な価値観に振り回されれば、妄想でしかない葛藤に振り回され、現実から逃げようとするほどストレスが強くなる。死という根源的な葛藤から人間は逃れられないとあきらめることが死の恐怖を克服する最大の近道なのだ。
【特別鼎談】

ゴルフで国を興す!
●日本プロゴルフ協会会長 松井 功
●日本プロゴルフ協会理事 木下 久雄
●聞き手 ジャーナリスト 植田 剛彦

日本人のモラルと品格を賦活する
“ハニカミ王子”を思う親心


 イギリス発祥の「紳士のスポーツ」として一般に知られるゴルフの本質は、これまで金持ちの道楽と言われていたネガティヴなイメージからは程遠い。知力、体力、気力、意志力、行動力、思考力のすべてを厳しく要求される全人格的スポーツである。
 またゴルフは、精神力7割・技術力3割と言われるほど、自己との葛藤を制した者にのみに勝利がもたらされる過酷なメンタル・スポーツとしても知られる。
 言い換えれば、ゴルフの本質は、現代日本人が失ったモラルや品格をスポーツを通して取り戻す手段となり得る、「一人をつくり、一国を興す」潜在的な力を持っているということである。
 ゴルフを通して日本人のモラルの賦活を試みようとしているPGAの松井功会長と、木下久雄理事に聞く「日本人を賦活する“ゴルフ興国論”」。


教師とリーダーに捧げる応援歌
●原田総合教育研究所所長 原田隆史

−心のコップを開いてみんなが元気になるスキル

 26年前の春、夢と理想とガッツさえあれば何事も乗り越えられると信じて中学校の門をくぐった教師が見たものは、厳しい学校の現実だった。大学で学んだ指導スキルは通用しなかった。技術一辺倒の指導から、子どもの心を揺さぶり変容させる教育へ−。
 現実との格闘から導き出された教育スキルは、荒れた学校を正常化し、公立中学校にあって陸上競技で日本一13回達成という奇跡を生んだ。現在、現役教師を辞して、全国の教師に指導ノウハウを伝受する原田隆史氏のもとには、ビジネス界からの指導要請も後を絶たない。関係不全の現代社会にいかに生きるべきなのか。教育現場から生まれた心のスキルを聞く。


ストレスこそ成功の源泉だ
●アサヒビール名誉顧問 中條高徳

社会のために生きた男の軌跡

 「つらければ何かに気づく。豊かになればなるほど気づきが悪くなる。疑似体験でもいから苦しい体験を聞き、本で学べば、自分の生き方が変わる」
 そう語るのは、かつてハーバード大学の調査で再生不能との烙印を押されたアサヒビールを起死回生させ、業界ナンバーワンにまで引き上げた中條高徳氏である。
その奇跡ともいえる偉業は、中條氏の生きる姿勢抜きには語れない。
敗戦による茫然(ぼうぜん)自失の大挫折を味わい、息を呑むような価値観の民族的大転換に遭遇しながら、それをバネにして生き直しを図り、戦後は、師と友と書によって新しい学びを尽くし、あらゆる兵法の原理原則を独自の兵法として組織の中で果敢に展開した。
 猛スピードで激変する現代社会の中で、如何なる困難も、強烈なストレスも成功への源泉に変え、強(したた)かでダイナミックな人生を謳歌するための兵法的要諦を聞く。


老親の最期の声が聞こえるか
●介護老人保健施設「鶴舞乃城」看・介護部長 高口光子

親子の意味さえ教える介護現場

 親の介護に立ち向かうストレスは想像を絶する。自分の原点に対する尊厳が失われようとする修羅の場である。しかし、その場をどう味わえるか。親の生き方・死に方を引き受けなければならなくなったとき、それを通して親は最後に何を伝えようとしているのかを理解しなければ、その親の子供として縁をいただいた意味がない。老親の声なき最後の声をどう聞くか。


人生、笑ってなんぼ
●日本笑い学会会長 井上 宏

笑いは本当の自分に会わせてくれる

 人間にとって喜怒哀楽は生きることそのもの。楽しいときもあれば、どん底まで落ち込むこともある。壁にぶつかり、もう自分の力ではどうにもならないと思ったとき、「笑い」のことを思い出してほしい。
 笑いは呪縛や妄念にがんじがらめになった自分を解放してくれる。ユーモアは対立や敵対を包み込む力を持っている。
 どこの国の生まれでも、老いも若きも男も女も富める者も貧しき者も、生まれながらにして笑いという生命の源泉を持っていることが、人間にとっての大きな救いなのではないだろうか。


【緊急寄稿】

危険な選択と知られざる日本の命運
●外交評論家 岡崎久彦

−恐るべし!台湾総統選挙後の東アジア情勢

 昨年12月の台湾立法院の選挙で、国民党は圧倒的な勝利をおさめた。陳水扁(ちんすいへん)総統を旗頭にして独立、民主化に邁進していたはずの台湾国民であるが、その方向性を俄(にわ)かに変換させたかのような選挙結果であった。そして3月22日に行われた台湾総統選挙は、国民党が圧勝、馬英九(まえいきゅう)総統が誕生した。
 このことは単に今後の台湾の行方を左右するだけでなく、日本の行方、いや東アジアや世界の行方をも左右する歴史の転換点となる。
 日本の命運は台湾にあり−は、決して誇張ではない重大な現実であるが、それを深刻に受けとめる日本国民は意外と少ない。
 巷間北京オリンピックまでは中国は動けないと囁かれる中、台湾海峡有事という不測の事態に対して、われわれ日本人はどう対処し、行動をすべきなのか。
外交のプロであり、鋭い台湾情勢分析で日本ばかりではなく台湾においても最も信頼される岡崎久彦氏の目に映る「台湾総統選挙後の世界」。

【好評連載】
二十世紀最後の武士(もののふ)外交官<3>
加瀬俊一とその時代3
●外交評論家 加瀬英明
いのちの泉<4>
食文化狂騒曲の忘れもの
●宗教学者 山折哲雄
時空の旅人<4>
西洋の本質は対話にあり
●生物学者 長沼 毅
シュトゥットガルトの空から<4>
チーズの話
●作家 川口マーン惠美
現代養生訓<4>
治未病の基本は飲食習慣
東洋医学の食養生法に学ぶ
●自然美システム研究所代表 萩原俊雄
高橋史朗の第三の教育論<58>
発達論に基づく新たな教育理論
●明星大学教授 高橋史朗
文明の新地平<16>
中国は「民主化」するか
●評論家・麗澤大学教授 松本健一
黙さず語らん<39>
タメ、タメ、タメ。カン、カン、カン。
●作家 藤本義一
にっぽん人情小噺<28>
向上心
●落語家 三遊亭鳳豊
未知なる輝き<39>
折ることで引き出す紙の美
●株式会社FEM代表取締役社長
 山口真奈美
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<146> ●写真家 浅井愼平
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<95>
仙丈ヶ岳 忘れ得ぬ山
●作家・文芸評論家 高橋千劔破




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