2008年3月号
独慎抄
妄想が顛倒させる人間とカネの関係

 カネは道具であり、それを使うのが人間であるにもかかわらず、カネが目的となった瞬間に、人間がカネに従属する。人間とカネの倒錯した関係は、人間の側の錯覚によって生まれる。カネで買うべきもの、買うべきではないもの、買えないもの、の見極めを誤ってはならない。カネは主体を奪われないような道具としての使い方をして初めて生きるもの。
【特集】
「カネ」の幻想
マネーゲーム化する資本主義を超えて
ー輝かしい地球の未来のために
●デフタ・パートナーズ・グループ会長
 財務省参与、国連常任監視団大使 原 丈人
混乱する市場の構造と、経済の本質を見極めよ

 サブプライムローン問題に端を発し、世界の経済は揺れに揺れている。いま、世界の経済に何が起きているのか−。
 1980年代からのシリコンバレーでビル・ゲイツが恐れたボーランド、オープラス・テクノロジー(現インテル)など先端技術産業の担い手を次々と世界的企業に育て上げ、現在は米国と日本を拠点にポスト・コンピュータ時代の基幹産業を展望する実業家・原丈人氏に、市場混乱の本質と資本主義の未来を聞く。


儀礼と貨幣愛の相克
●哲学者・立教大学大学院教授 内山 節
貨幣も単なる商品の一つ

 砂漠での水はダイヤモンドよりも有用性がある。そうした使用価値にお金を使うのが私たちの一般的な貨幣へのかかわり方であるが、現実に行われている市場経済の主軸は、骨董品に大金を使うような交換価値としての貨幣の使われ方である。そのことをケインズは「貨幣愛」と呼んだ。貨幣愛が肥大化することで、貨幣量で表された自分が本当の自分であるという錯覚から自己喪失が始まり、社会を頽廃させる。しかし、このジレンマから逃れることもむずかしい。できることは、交換価値の世界を小さくして、貨幣も単なる商品の1つにすぎないと位置づけてしまう「儀礼」の世界を日常の中に増やしていくことしかない。


造幣の匠たち
日本の造幣技術を支える

 造幣局東京支局で貨幣や勲章の製造に携わる8人に、そのプロ意識を語ってもらった。左手に「磨きダコ」を持つプルーフ貨幣の匠たち、個人差を消しながらチームで勲章を造る匠たちの国家公務員としての誇りが日本の貨幣技術を支えている。地方自治や地域活性などに取り組む造幣局の新たな姿勢も垣間見られる。


貨幣の歴史
経済に動かされる貨幣、経済を動かす貨幣

 貨幣は物々交換の時代から始まり、和同開珎が初めて流通貨幣として鋳造された。しかし、改鋳のたびに貨幣の質が悪化し人々の信用を失い、平安時代半ばで国内での貨幣の製造は消滅する。その後海外から貨幣を輸入し、家康の時代になってようやく貨幣制度が成立する。約270年にわたって続く3貨制度である。江戸時代になっても貨幣の改鋳は行われたが、経済を改鋳によってコントロールしていた。明治になり貨幣制度は西洋式に移り変わる。富国のために開かれた制度を採用する必要があったからだ。
「貧」の眼差し
●花園大学名誉教授・(財)禅文化研究所所長 西村惠信

日本人はなぜ豊かになって貧相になったのか

 仏教の生き方、すなわち出家はすべての囚われを放下することをもって前提とする。お金を持つこと=幸福といった現代の幸福論の対極にあるのが、宗教的な「貧」の道である。仏教にいう人間の幸福とは何か−臨済宗の学僧・西村恵信師が空(くう)という仏教の眼差しを、現代人に分かりやすく語りかける。


ゼニの心得、教えたる
●新宿救護センター所長 玄 秀盛

カネの呪縛の解き方

 小学生で始めた生き延びるためのゼニ儲けから欲のゼニ儲けへと変わり、ねたみ、猜疑心、カネの呪縛に苦しみながらも「渇き」が後を絶たず、ますます守銭奴地獄へ向かう。そのゼニからも、そこに集まる人種からも遠く離れた「人儲け」の世界にいる今、かつての世界を振り返って「生きるゼニと死ぬゼニ」があることや、駆け込み寺にやってくるカネといのちを天秤にかける人々の実態を語る。


江戸の経世済民 日本発!風流経済学
●評論家・社会貢献支援財団会長 日下公人
日本人だけが理解していない「日本の実力」

 金融経済の専門家として、逸早くソフト化・サービス化の時代到来に注目し、日本経済の名ナビゲーターとして知られる日下公人氏は、一貫して、世界でも類を見ない平和と繁栄が続く幸福な国の姿を実現した江戸経済に注目してきた。
 日下氏によれば、アメリカ発の経済の視点で見ると惨敗の日本経済だが、マンガやアニメに象徴される文化創造を基本においた、江戸時代の「風流経済学」の観点に立つと、勝ちに等しいと言う。「21世紀の世界は江戸化する=グローバリゼーションからエドナイゼーションへ」を標榜する日下氏による新しい経済学のすすめ。


変わる自治体・密着レポート
「税金」をめぐるお役所と住民の意識改革−行政改革の切り札・事業仕分けの現場から

自治体と住民が自立していくための手がかり

 庶民にとって「お金」といえば、生活のために回す現金をイメージしがちだが、税金というかたちで国や自治体に納め、自分が暮らす国やまちを支え、公共サービスとして享受する「お金」もある。自分が納めた税金がきちんと運用されているのか、市民から預かった税金を有効活用できているのか、市民側も行政側も考え抜いたことがあるだろうか−。政策シンクタンク・構想日本(代表・加藤秀樹氏)が発案・推進する「事業仕分け」というユニークで深い手法を福岡県直方市の現場からレポートする。

【好評連載】
二十世紀最後の武士(もののふ)外交官<2>
加瀬俊一とその時代2
●外交評論家 加瀬英明
いのちの泉<3>
「瞼の母」の原風景は消えてしまったのか
●宗教学者 山折哲雄
時空の旅人<3>
五穀豊穣
●生物学者 長沼 毅
シュトゥットガルトの空から<3>
古代ローマ人の置き土産
●作家 川口マーン惠美
現代養生訓<3>
季節の万象変化に適応できる心身の鍛錬
●自然美システム研究所代表 萩原俊雄
高橋史朗の第三の教育論<57>
親学をめぐる家庭教育施策の流れ
●明星大学教授 高橋史朗
文明の新地平<15>
経済発展と「民主化」
●評論家・麗澤大学教授 松本健一
体をひらく、心をひらく<最終回>
身体年齢を生きる
実践入門講座
背骨と日本人の感性
野口整体 気・自然健康保持会
 金井とも子・金井省蒼
魂の独立宣言<最終回>
試験管の中の国家論
●表現教育者 宮川俊彦
黙さず語らん<38>
人生も一本の樹である
●作家 藤本義一
学び舎の窓から<最終回>
学校への「委任状」
●教育実践『響の会』会長
 角田 明
にっぽん人情小噺<27>
仰げば尊し
●落語家 三遊亭鳳豊
未知なる輝き<38>
「環境認証制度」を知っていますか?
●株式会社FEM代表取締役社長
 山口真奈美
ザ・ビジネス・ドメイン
志の持続を支えるもの?ベンチャーの旗手から本物の経営者へ
●株式会社パソナグループ
 代表取締役グループ代表 南部靖之
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<145> ●写真家 浅井愼平
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<94>
吾妻山 伝説と修験の山塊
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
●表紙撮影 佐々木悦久




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