2007年10月号
独慎抄
◎芸術は「内なる真実」を要求する
ルネサンス(人間復興)の真意とは


 レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティは、ルネサンス期を代表する芸術家である。同時代を生き、表現は異なっても、ともに人間あるいは人類の「内なる真実」を洞察しようとした。それこそがルネサンスの真意でもあった。日本の洋画家・岸田劉生もまた「人類への奉仕・真善美の樹立を人間最高の目的とする人類の使徒としての画家(和辻哲郎)」と評されるほど、人間の「内なる真実」を表現しようとした。芸術は、人間にその「内なる真実」の存在を要求すると同時に、「内なる真実」を表し得ているかという深みもまた表現者に要求するものなのである。
【特集】
創作への衝動
【ビジュアル】人間と芸術

◎レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」
 福音書に登場する人物を科学的な観察眼で読解し、その動作を克明に構図化している。

◎ミケランジェロ・ブオナローティ「最後の審判」
 ダンテの『神曲』・地獄篇をイメージしたとされ、キリスト教的真実に忠実な人類の終末観を描いている。

「画狂無尽」
◎葛飾北斎「凱風快晴」「尾州不二見原」「神奈川沖浪裏」
 晩年に画狂老人卍(命がけで陽光や仏心を描く老人の意)と称した北斎の「冨嶽三十六景」の著名な3点を取り上げ、北斎が何を描こうとしたのかを読み解く。

特別インタビュー
創造は静かなるパッション
●演出家 平田オリザ

リアルが人を動かす

「人間そのものの存在が十分に劇的であり、驚きに満ちている」。派手な演出や台詞のない「静かな演劇」の旗手として、また海外で最も積極的に活躍する演劇人として、1990年代以降の日本の演劇界をリードし続ける平田オリザ氏。彼が演劇で追求してきた「リアル」は、観客の想像力とともにつくりあげていく世界であるがゆえのものだった。


【特集】創作への衝動

「小室等」への覚醒ー僕が僕のすべてを肯定したとき
●ミュージシャン 小室 等

歌の原点は人生の肯定

 日本にフォークソングを広めた第一人者ともいえる小室等氏が、60歳を超えて自分のすべてを肯定できるようになった今、過去の自分を振り返り、今の自分を見つめ、人生を肯定することについて語る。その肯定こそ歌の原点でもあったのだと言う。


◎「ありのままに抱かれてー画家・熊谷守一の世界」
 97歳でその生涯を終えた画家・熊谷守一。あらゆる生命をあるがままに受け入れた熊谷が描く絵は、「獨楽」という熊谷の人生そのものを表わしている。
コアガラスの神秘ー古代オリエントと日本工芸の対話
●ガラス工芸家 松島 巌

開放感のある創作ができる理由

 松島巌氏の仕事は、2000年前にヨーロッパで途絶えたコアガラスの復元ではない。オリエントの技法を用いて日本の工芸に潜む日本人の美意識をもって新たなコアガラスを創造していくこと。古代との対話によって、時間の枠や制作競争に囚われない開放感のある創作を続けることができている。



美の臨界点に挑戦する
● 造形作家 西村陽平
「表現」における没個性

 触れてみると暖かい。耳を近づけると音がする。西村陽平氏の「触る作品」は、新鮮な驚きにあふれている。盲学校で23年間教鞭をとってきた西村氏は、独自のアイデアで見る人の意表をつく作品作りを続けてきた。その原点にあるのは「表現における没個性」を目指す姿勢。人間の痕跡を消し「物そのものの力」を引き出した西村作品は、普遍的な芸術にいたる新しい地平を切り開いている。


身体こそ芸術(リアル)の源泉だ!
●東北芸術工科大学教授・舞踏家 森 繁哉

人間性の回復のために身体を使う

 現代の身体教育は、スピードや瞬発力を伸ばすことを重視しているが、本来の身体は、自分自身を「開いて」いくような使い方をするものではないのか。そう考える森繁哉氏は、自身が舞踏家として感じてきたものを通して、身体に目覚めさせる教育を実践している。それは人間性の回復でもある。


三十一文字の宇宙を拓く
●歌人 佐佐木幸綱

歌の原点は言葉にならない思い

 五・七・五・七・七という、極めて制限された表現形式に思いを込める短歌。一見窮屈に感じられるその形式は、日常の言葉では言い尽くせない思いや感覚を託す方法として、われわれの祖先によって生み出され、愛され続けてきた。歌人・佐佐木幸綱氏は、詠む者と読む者が出会って初めて短歌は完成すると言う。歌の言葉をよすがに、自然と人、人と人とが、時空を超えて共感し、響き合う三十一文字の限りない世界と可能性がそこにある。


氷河期の現代美術界は甦るか
●美術評論家 柴辻政彦

現代美術に見出すものとは?

 日本の美術界は、すでに十年来の氷河期である。しかし、巷には自称「アーティスト」が氾濫している。この混沌とした美術界でいったい何が起きているのだろうか。美術界の現状と多岐に分化する現代芸術に何を見出すのか。多くの芸術家と対話を重ねてきた美術評論家、柴辻政彦氏が現代美術と芸術について語る。

【好評連載】
高橋史朗の第三の教育論<52>
高校家庭科教科書の検証1
家族を相対化する家庭科
●明星大学教授 高橋史朗
これが解決の決め手!長田百合子の相談室<9>
薬物だと知らずに娘に飲ませていました
●エデュケイションライター
 長田百合子
文明の新地平<10>
「公害の最先進国」の経験
●評論家・麗澤大学教授 松本健一
体をひらく、心をひらく<10>
丁寧に自分を生きる
実践入門講座
「体癖」という無意識の世界
野口整体 気・自然健康保持会
 金井とも子・金井省蒼
魂の独立宣言<15>
赤とんぼ論
●表現教育者 宮川俊彦
黙さず語らん<33>
アナログ復帰の時代
●作家 藤本義一
学び舎の窓から<17>
教員が知らない生徒の苦悩
●教育実践『響の会』会長
 角田 明
にっぽん人情小噺<22>
先生のそばに行こう
●落語家 三遊亭鳳豊
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<140> ●写真家 浅井愼平
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<89>
黒姫山
山中に消えた黒姫
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<30>
思想家篇<4>ヴォルテール
●明治学院大学教授 武光 誠




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