2007年5月号
独慎抄
「分節された空間としての時間」を脱した明るさ


 松尾芭蕉が『奥の細道』で記した「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」の原典は、李白の詩にある。「それ、天地は万物の逆旅なり、光陰は百代の過客なり(そもそも、広大な天地は万物を迎え入れる旅館のようなもの。流れ行く時間は永遠に絶えることない旅人のようなもの)」、その後に、李白はこう続ける。「定めなき人のいのちは夢のごとく、喜び楽しむ歳月はどれほどもない」。非常に雄大な時間の視座に立って自分のいのちを映し出したとき、私たちがいかに時計時間の中で汲々として過ごしているかが見えてくる。人が便宜的に分節することによって作り出した時間、それに取り込まれそうになったとき、別の視点を持つことでそれを脱することができる。李白も、芭蕉も、自分を呪縛しない時間を持っていた。
【特集】
光陰は百代の過客
【特別インタビュー】
●お茶の水女子大学教授 藤原正彦

日本人よ、誇り高い「品格」を取り戻せ!

 昨年の流行語大賞ともなった250万部のベストセラー『国家の品格』の著者・藤原正彦氏の主張は今も昔も変わらない。「一に国語、二に国語、三、四がなくて、五に算数、あとは十以下」という国語教育に対する絶対的な信念である。
 日本人に自信と誇りを取り戻すために問う「世界に誇るべき日本の“国柄”と、日本人本来の品性」。



【特集】

<グラビア>時間の宇宙
●写真 丸谷美津子



日本人の「時間」
●宗教学者 山折哲雄

二重の時間が安定させる

 本来、日本人の時間感覚は「人生50年」という意識のうえに成り立っていた。安定した生の時間があった。ところが、現代は「人生80年」と、数字上は延びた。にもかかわらず、日本人の時間意識は数百年にわたる50年という時間を離れていない。生と死を捉えて生きていた人生に、老と病が重大な問題として加わり、不安定さをもたらしている。その不安定さをも生き切るために、西行、芭蕉、良寛ら、聖と俗の二重の時間を生きた人々をモデルとして掲げる。不安定に思える二重の時間を生きることが、実は最も安定した生き方なのであった。
人間は多面的な時間を生きている
●総合研究大学院大学教授 池内 了

人生が楽しくなる時間を持つ

 好きなことをやっている時間は短く感じられる。空想の世界で遊んでいるときはゆっくりとした時間が流れている。見える時間もあれば見えない時間もある。私たちはさまざまな時間を生きているのだから、人生を楽しくする時間を持ったほうがいい。そのためには、長い時間の尺度を持つことだ。おおらかに生きて人生を楽しむことを、ニュートンやアインシュタインの時間論を持ち出しながら説く。


「未完」に託す
●サグラダ・ファミリア聖堂彫刻家 外尾悦郎

未完成だから希望を持ち続ける

 スペインのサグラダ・ファミリア聖堂は、120年を超えてもなお「未完」である。それは、建築家アントニオ・ガウディの意図によるものではないのか。永遠という時間の向こうにあるものを伝えるために、あえて「未完」を引き継がせていく。時間を区切ることなく持ち続ける未完のなかに、他者に託すという希望を教えているのではないか。


輪廻という時間、永遠という自由
●チベット仏教普及協会副会長 クンチョック・シタル

死生観と時間の捉え方がひとつになった生き方

 魂は決して滅びることなく生き続けると考える輪廻の思想は、壮大な時間の感覚をもとにした死生観を持つチベット人独自のもの。輪廻によって魂が生き続けると信じる人々の持つ、永遠に生きる自由という感覚に立ったうえで、いのちや生きる意味を捉えなおすことができれば、ものの見方は変わってくる。


「持続」って何だろう?
ー万物変転の中で自他共生をー
●東京学芸大学名誉教授 筒井文隆 

生の躍動を自らの内に感じて

 空手の「型」という1分間のドラマに感動するのはなぜだろうか? それは1人の人間の渾身の演舞に、「生の躍動」を感じるから。止むことのない創造の要求である「生の躍動」によって宇宙の全存在が常に運動し、変化、生成していると捉えるフランスの哲学者ベルクソン。彼の哲学の出発点には、「持続」という時間の捉え方があった。自分の内外で生きて流れている時間、「持続」の魅力を筒井氏が言葉と「型」で見せてくれた。


家庭からの教育再興プロジェクト「関連レポート」
助けられたら助けよの精神
●問題から立ち直った親の会


 不登校、ひきこもり、非行といった子どもの問題を抱え、解決していった母親たちが、その経験を社会に役立てたいと立ち上がりました。「家庭からの教育再興プロジェクト」の副会長の長田百合子氏が自ら家庭に入り、解決に導いた母親たちの集団(会員数70名)です。母親の母親による意識改革に燃える「問題から立ち直った親の会」をレポートしました。


本格始動! 家庭教育再興へのうねり
◎設立決起大会開催    
「家庭からの教育再興プロジェクト」設立記念大会レポート
 4月8日に東京・一ツ橋の如水会館で開かれた設立記念大会は200名の会場も立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。その模様を速報的にレポートしました。


【特別対談】後編
いまを「ひたむき」に生きる
●医療法人社団慶成会理事長 大塚宣夫
●洋画家 田村能里子

【好評連載】
高橋史朗の第三の教育論<47>
子供に本気で向かう者
「茶髪の者、立ち入りを禁じる」との毅然とした姿勢で荒れた学校を次々と立て直していったスゴ腕教師は、元ワルの教え子に背中を押されるように市長に当選した─。岡野俊昭銚子市長をゲストに迎えて、人間教育や親教育の勘どころを聞く。
●銚子市市長 岡野俊昭
●明星大学教授・埼玉県教育委員会
 委員長職務代理者 高橋史朗
これが解決の決め手!長田百合子の相談室<4>
一人では何もできない息子なので、独り暮らしをやめさせたいのです
●エデュケイションライター
 長田百合子
石坂公成「自由と教育を語る」<5>
アメリカと日本の民主主義の本質的な違い
●日本学士院会員・
 ラホイヤアレルギー免疫研究所
 名誉所長 石坂公成
文明の新地平<5>
文明とテロの問題
●評論家・麗澤大学教授 松本健一
体をひらく、心をひらく<5>
いい女はこうしてつくられる5
男と女─夫婦円満の秘訣
実践入門講座5
正しい正座のすすめ
野口整体 気・自然健康保持会
 金井とも子・金井省蒼
魂の独立宣言<10>
個潰し論
●表現教育者 宮川俊彦
お墓参りは楽しい<59>
ビアトリクス・ポター
ピーター・ラビットの生みの親、ビアトリクス・ポターは、イギリス湖水地方のどこかに眠る。散骨の場所が特定されないように配慮したポターの遺言によって、湖水地方の大地すべてがポターのお墓になったのだ。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
黙さず語らん<28>
格差の原点を考えよう
●作家 藤本義一
学び舎の窓から<12>
子どもは待ってる「G」の出番
●教育実践『響の会』会長
 角田 明
にっぽん人情小噺<17>
兄弟喧嘩
●落語家 三遊亭鳳豊
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<135> ●写真家 浅井愼平
【歴史エッセイ】
人生の指針を残した偉人たち<25>
教育者篇<5> ペスタロッチ
●明治学院大学教授 武光 誠
日本の名山 その歴史と文化<84>
太平山
おいだら山の山鬼
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
 
●表紙写真 佐々木悦久




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