2007年4月号
独慎抄
仕事と人生は不可分なり

 仕事とプライベートは別だ、という言い方がある。確かに、そういう考え方もあっていい。しかし、そうではない捉え方をしたら、どうだろう。仕事も自分のこと、プライベートも自分のこと。つまり、仕事もプライベートも分けられない、そのような見方である。生きるための道具としての金銭を得ることは大事なこと。だから仕事もする。しかし、仕事の意味はそれだけではない、と思うことが人生までもまったく違った見え方をするきっかけになる。
「君子財を愛す 之を取るに道あり(君子は財を大切にする。しかし、この財を得るにはしかるべき道というものがある)」という言葉がある。仕事イコール儲けること、という視点では人生と働くことはなかなかつながらない。その財を得る「道」のほうに目を向けてみたときに、おそらく人生は働くに値するものだということが分かってくる。

「金というものは儲けられるもんじゃない。授かるものだ」(伊庭貞剛)
【特集】
人生は働くに値する
【特別インタビュー】
「愚直」のすすめ−家庭教育が日本人の誇りを育む
●評論家 金 美齢

「鬼かあちゃん」が日本を救う

 「日本人はもっと自信を持って世界と対峙してほしい」−台湾独立のために数十年に渡る活動を続けてきた金美齢氏は、第二の祖国ともいえる日本に対しても叱咤激励を惜しまない。そして、その毅然とした姿に、日本人よりも日本人らしさを見るのは、編集子だけではあるまい。
 金氏に聞く、日本人の本質−「愚直に生きる美しさ」。


老舗のスピリット−「継続は善なり」 
●ジャーナリスト・拓殖大学教授 野村 進

100年企業に見る仕事観

 創業100年以上の老舗と呼べる企業が日本には10万軒以上もある。これほど多くの企業が存在する国は珍しい。それは、なぜなのか。情報をいち早く掴んだものが勝ち組となったり、目先の「売り抜け」に奔走する現在のビジネスとは一線を画す。絶えず磨き続ける技術力と、「どうすれば継続できるか」という積み重ねられた哲学が、そこにある。同族経営、非上場も決してマイナスではない。「自分探しなどする必要がなかった」という老舗を引き継いだ経営者の言葉が、継続の中の安定感を示唆する。
自己実現ではなく、役割を果たす暮らし
●哲学者・立教大学大学院教授 内山 節

「仕事」と「稼ぎ」の違いを自覚した働き方

 仕事をするのは、経済的な理由のみからだろうか、それとも自分の思い描く人生を歩む自己実現のためであろうか? が、そのどちらでもない働き方が存在している「村」もある。そこには、何のために働くのかという労働に対する意味づけすら必要とせず、自然や周りの人々との関係の中で自分の役割を果たすことが仕事だとする働き方があった。


生きた証はどこにある?
●(株)日本総合研究所・創発戦略センター所長 井熊 均

ポジティブさが変える

 仕事を「つまらない」と思うか、楽しいと思えるか、その違いはポジティブ・シンキングにある。では、ポジティブな捉え方の源泉は? 仕事は生きること、そう考えれば、自分が「生きた」という証を残そうとする意識が、自分の仕事にも生にもポジティブさをもたらす。それは同時に、職場、家庭、友人などの関係性をも変えていく。


中村選手の“転職”
みんな「評価」の中で生きている
●エグゼクティブ・コンサルタント 梅森浩一

仕事の評価は他人がする

 直接的にであれ、間接的にであれ、みんな誰かに評価されながら生きている。そのことが分かっていないときに、プロ野球・中村紀洋選手のような契約交渉の決裂の原因になる。逆にいえば、人は誰かに評価してもらいながら生かされているということでもあろう。それを前提として仕事も考えていけばいい。さまざまな評価が仕事によって下される。


生身の「私」を立ち上げる−閉じた生活を開く「介護」という仕事
●排泄用具の情報館「むつき庵」所長・高齢生活研究所所長 浜田きよ子

観察者の目ではなく、当事者の目で

 道具を適切に使うのは意外と難しい。というのも道具は使い方によっては、人を生かしも殺しもする「諸刃の刃」だからである。長年、福祉用具の紹介をしてきた浜田さんは、人の「暮らし」の全体を丁寧に見ていくこと、それも観察者としてではなく、当事者の目で見ていくことで、どんな道具が実際にその人の生活に役立つのかを選定する。究極の個別ケアである排泄介護には、この視座の転換が不可欠だと考える浜田さんの仕事にスポットを当てた。


お弁当をご案内しましょうか? 
●山形新幹線「つばさ」車内販売員 斉藤 泉

「販売員」と「乗客」の壁を超える接客

 斎藤泉さんは山形新幹線「つばさ」の車内販売の売り上げナンバーワンである。そのセールスの秘密を知ろうと、テレビや新聞の取材から企業での講演依頼に至るまで声がかかる。しかし、彼女は「この仕事が嫌い」と言いきる。「嫌い」だからこそ解決策を考える。お客様の一言が「つばさ」全体の改善にも繋がる。マニュアルなどなく、対応は販売員と乗客の関係でもない。「人」と「人」との関係で接したとき、仕事が単なる仕事ではなくなるのかもしれない。


「家庭からの教育再興プロジェクト」レポート
「福岡から始める!」
●NPО法人 師範塾
子どもたちのために、わがまちのために
●安川タクシー社長 安川哲史

教師や経済人の期待

 4月8日に正式に始動する「家庭からの教育再興プロジェクト」。しかし、すでに動き始めた地域も……。教師のための研修組織・NPO法人師範塾が、親教育の場を広げていこうと、2月のフォーラム成功を皮切りに「師範塾福岡親学プロジェクト」を立ち上げ、講演会活動を展開中です。家庭からの教育再興プロジェクトは、独自の運動を展開する全国各地の組織と理念を共有し、手を携えて親教育や家庭支援運動を行うという性格のもの。フォーラム成功を親教育推進の決起大会と秘かに位置づけ、500名の会場を埋め尽くす成功に導いた事務局長の水江恵子さんに聞きました。
 福岡のこうした動きに対して、地元の経済人が応援しています。アスカコーポレーション社長の阪和彦氏と、地元福岡にプロ野球やプロサッカーチームを誘致してきた中心人物・安川タクシー社長の安川哲史氏にも言葉をいただきました。


【特別対談】前編
豊かな最晩年をつくるために
●医療法人社団慶成会理事長 大塚宣夫
●洋画家 田村能里子

【好評連載】
これが解決の決め手!長田百合子の相談室<3>
子どもと私の人生を取り戻すために離婚を考えています
●エデュケイションライター
 長田百合子
石坂公成「自由と教育を語る」<4>
医学的に見た教育の欠陥
前頭連合野の未発達がいじめ・自殺の原因か 
●日本学士院会員・
 ラホイヤアレルギー免疫研究所
 名誉所長 石坂公成
文明批評の地平<4>
砂と泥が入りまじって
●評論家・麗澤大学教授 松本健一
体をひらく、心をひらく<4>
蝶よ、羽ばたけ
実践入門講座
体から知る「女性である自分」 
野口整体 気・自然健康保持会
 金井とも子・金井省蒼
魂の独立宣言<9>
多重的自己武装論
●表現教育者 宮川俊彦
お墓参りは楽しい<58>
有島武郎
大正12年に女性編集者と心中した作家・有島武郎は東京・府中の多磨霊園に眠る。生涯、「道」を求め、自由が「死」にあると信じた末の行動だったが、むしろ生きて苦悩を楽しむべきではなかったか……。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
黙さず語らん<27>
仕事よりも仕己
●作家 藤本義一
未知なる輝き<29>
「ニート」から作家を!
●NPOコトバノアトリエ代表理事
 山本 繁
学び舎の窓から<11>
三月までの兄 四月からの弟
●教育実践『響の会』会長
 角田 明
にっぽん人情小噺<16>
一かけ二かけて三かけて
●落語家 三遊亭鳳豊
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<134> ●写真家 浅井愼平
【歴史エッセイ】
人生の指針を残した偉人たち<24>
福沢諭吉
●明治学院大学教授 武光誠
日本の名山 その歴史と文化<83>
三輪山 日本最古の神の山
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
 
●表紙写真 佐々木悦久




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