2006年11月号
独慎抄
「北」の詭弁者が美徳と思い込んでいるものは

「われわれが美徳と思いこんでいるものは、往々にして、さまざまな行為とさまざまな欲の寄せ集めに過ぎない。それを運命とか人間の才覚とかがうまく按配してみせるのである。だから男が豪胆であったり、女が貞淑であったりするのは、かならずしも豪胆や貞淑のせいではないのである」
(『ラ・ロシュフコー箴言集』・岩波文庫)
「人間読解」という言葉を聞いて、いの一番に思い出すのが17世紀のフランス貴族・ラ・ロシュフコーだ。彼の『箴言集』は、フランス・モラリスト文学の最高傑作として名高い。原題が『人間考察もしくは処世訓と箴言』ということだから、なるほど、読み進めていくにしたがって、人間という存在の隠微な偽装が剥がされて相も変わらない裸の人間の実相が時空を超えて伝わってくるのが面白い。ラ・ロシュフコーをぺシミスティックとして批判する向きも多いが、人間の実存という観点からいえば、悲観的というよりも現実的人間読解というほうが正鵠を射ているように思う。
 現代にも「偽装した悪徳」を美徳と言い張り、その独裁と圧政と孤立によって国を自滅させようとする国家指導者がいる。北朝鮮の偉大なる将軍様といわれる金正日である−。
【特集】
人間読解
安倍総理「所信表明」に赤ペンを入れる!
●表現教育者 宮川俊彦

大胆不敵にも「安倍総理」を読解した!

 今、何かと話題の安倍総理。いったいどのような人物なのか、そして安倍内閣が目指す国づくりとは…? それらを安倍総理の「所信表明演説」から、表現教育者・宮川俊彦氏が読み解き、さらに国家、国における教育、政治と国民とのかかわりなどについても言及する。
 北朝鮮外交などの大きな「山」を抱えた安倍政権がまだスタートしたばかりの今だからこそ、宮川氏の赤入れは、これからの安倍政権を洞察するための参考テキストとなる。


「私」を解体させましょう
●作家・福聚寺副住職 玄侑宗久

坐禅と呪文は「私」を解体させる鍵

 人間の根源的な課題である「苦」。「苦」に悩まされたことはおそらく誰にでもあることだろう。この課題にはお釈迦様も悩んだのである。そこでお釈迦様はこう考える。「私」を仕立てるから苦しむのだと。生まれて間もない、まだ「いのち」の状態であるときには、「私」も「あなた」もない。私たちはいつのまにか「私」をつくりあげてしまい、二項対立の概念を生んでしまうのだ。ならば「私」の解体の方法は? 作家であり、僧侶である玄侑宗久氏は、その糸口を「瞑想」や「お経」にあると語っている。

◎グラビア Remains
●フォトグラファー 勝又邦彦
広島と長崎の「被爆樹」は人間に何を語ろうとしているのか…。

一寸先は「光」
●映画プロデューサー・監督 山田火砂子

目の前の困難に見出した「光」

 知的障がい者施設「滝乃川学園」の創設・経営に尽力し「障がい者教育の母」と呼ばれた石井筆子とその夫・亮一の生涯を描いた映画「筆子・その愛−天使のピアノ−」が山田火砂子監督の手によって完成した。自身も重度の知的障がいの娘を持つ山田氏。自分にとって娘が障がいを持っているという事実は何を意味するのか。また娘の存在とは何なのか。山田氏はそれらに正面から向き合ったからこそ、「一寸先は闇」ではなく、「一寸先に光」を見出すことができたのだろう。その光を見せてくれたのは娘の存在。大事なのは欲や見栄ではない。その奥にある真の意味。あなたは本当に大切なものに気付いていますか?


「人間の壁」は超えられるのか
●奈良女子大学教授 浜田寿美男

「加害−被害」の奥に社会の構図を見る

 核家族さえ解体し、単家族になってしまったといわれる現代。このように個々の人間が剥き出しになってしまった社会では、「被害−加害」という構図でしかものごとを見られない「人間の壁」が立ちはだかる。「人間の壁」にぶつかったとき、人は「うまくいかないのは相手のせいだ」 という被害感情に覆われ、怒りが前面に出てしまう。
 それにひきかえ、自然災害などの「自然の壁」に対しては、人間は昔から「断念」という形の引き受け方を持っていた。障害を持つ子どもたちとどう関わっていくか、犯罪や事故をどう見るか。「人間の壁」や「自然の壁」の背後にあるものを読み解くことができれば、人はまた別の「ものさし」を手に入れることができるかもしれない。


「希望」の側に立ちながら 
●児童文学評論家・翻訳家 清水眞砂子

それでもあきらめずに「希望」を語れるか!?

 希望は人間の根源的な生きるエネルギーとなるものである。これを小さいころからいかにして持ち続けるかによって、その後の生き方も、感受性も、他者とのかかわり方も、すべて変わってくる。自分の立ち位置を希望に置くか、絶望に置くかで、生きる世界が違ってくると言ってもいいだろう。
 どのような生き方をするのか、どのようなところに目を凝らすか、何を次の世代に伝えようとするか…。人間は過ちを犯すものだが、社会が強調する「意味」や「目指すべきもの」からこぼれ落ちるところに目を向け続けていくことで、過ちを少なくしていく生き方はできる。そして、また、自分を支えてくれていたものにも気付かされていくのだろう。あえて収束を迎えなかった「ゲド戦記」の翻訳者に、この時代こその「希望論」を聞いた。


人生観なき仕事でいいのか! 
●リヴァンプ代表パートナー 浜田宏

仕事をするなら自分自身を読解せよ!

 世界的な企業の経営者の座を捨て、同じ志を持つ仲間と「日本を元気にするために」会社を立ち上げた浜田宏氏。その仕事観の裏には、「おれはこう生きる」という明確な人生哲学が構築されている。仕事は自分で切り拓いていくものという、当たり前の姿を日本人は忘れてはいないだろうか。自分を活かすことができるのは、会社という組織でも、年功序列や年俸制といったシステムでもなく、自分自身の「自分応援力」しかない。浜田氏の仕事観は、自分の人生や仕事をもう一度問い直してみるきっかけになるだろう。

【グラビア】
【連載】
学び舎の窓から<6>
いじめ・不登校と「大人の力量」
●教育実践『響の会』会長 角田 明
お墓参りは楽しい<53>
高田屋嘉兵衛
人間には3つの種類がある。死んでいる者。死んでいないが、ただ生きているだけの者。海に向かい旅立つ者。高田屋嘉兵衛は、そしてあなたは…。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
黙さず語らん<22>
一冊の本
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論<43>
「学力」と「教師の質」の向上
●埼玉県教育委員会委員長職務代理者
 高橋史朗
シリーズ・ニッポンの再建
明るく、楽しく、元気よく、教育改革!
●立命館大学附属小学校副校長
 陰山英男
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<129> ●写真家 浅井愼平
一眼の彼方<11> ●フォト・ジャーナリスト 井上和博
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<78>
位山 謎の巨石群の山
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<19>
大隈重信
新しいものを作るには勇気が必要だ
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
長田百合子の体当たり奮戦記<42>
親の心をゲットする
●エデュケイションライター
 長田百合子
未知なる輝き<24>
いじめられたからこそ
●私立豊川高校教諭 宮本延春
にっぽん人情小噺<11>
「最後の仕事」
●落語家 三遊亭鳳豊




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