2006年7月号
独慎抄
 磨き抜かれた良知で強かに生きるー「膽」で生きる実際

 江戸時代の後期を生きた鴻儒・佐藤一斎(1722ー1859)は、

  「志気(しき)は鋭からんことを欲し
   操履(そうり=行い)は端(ただ)しからんことを欲し
   品望(人間の品格と人望)は高からんことを欲し
   識量(見識と度量)は豁(ひろ)からんことを欲し
   造詣は深からんことを欲し
   見解は実ならんことを欲す」   (『言志後録』)

 と教えている。これは佐藤一斎が自ら日々の心得とし実践したものと伝えられるが、リーダーの本来の面目はこうあらねばなるまい。政治家も官僚も、企業家も、社会を牽引するリーダーとして拳(けん)拳(けん)服膺(ふくよう)すべきであろう。 
【特集】
膽(はら)で生きろ!
緊急独占インタビュー
「かあちゃんのハラ」で子(くに)を救え!  

●エデュケイションライター 
長田百合子
ニッポンの母よ、家庭づくりの職人たれ
「かあちゃんがしっかりしていれば、子どもも、社会も、国までも良くなる」という思いを胸に、体当たりの壮絶なメンタルケアで、不登校・ひきこもり・非行に悩む親子を救い上げる長田百合子52歳。その姿は、まさに「ニッポンのかあちゃん」そのものである。純粋一途であるがゆえに、真っ正直であるがゆえに、いわれない誹謗中傷の嵐にさらされる氏に、事の真相と氏の揺るぎない志・信念について、緊急独占インタビューするー。


ありのままが「ほんまもん」
●月心寺庵主 村瀬明道尼

偽らずに生きる
 滋賀県と京都府の間にある逢坂山。その麓にある月心寺の庵主、村瀬明道尼さんは「精進料理の明道尼」との異名を持つ。9歳のときに尼寺へ入り、39歳で生死の境をさまようほどの大事故に遭う。そのために庵主さんの右半身は今も思うように動かない。しかし、その事故を境に自分の生かされている意味、いのちの不思議さ、「自由」であることの本来の意味を問い始める。「生かされたいのちだからこそ偽らずに〈ありのまま〉で生きたい」、そう語る村瀬明道尼さんの料理は、ご自身のいのちを精一杯生かしきろうとするのと同様に、野菜の個性を殺さず、それぞれのいのちを生かしきろうとする心尽くしのものだった。




●表紙写真
微細な生物のはたらきの中に、
宇宙のデザイン原理が
隠されている。
撮影・大橋 弘
(ウグイスゴケ・地衣類
/富士山)
現代を呼吸する狂言師
●狂言役者・演出家 茂山千之丞

正しい「ひねくれ」的人生の歩み方

 中世を起源とする狂言は、近世以降、武士階級のみが楽しむ芸能として生き続けてきた。そのため、どこか権威的色彩の濃い芸能と見られがちである。関西の大蔵流を引く茂山千五郎家は、そうした能・狂言界の閉鎖的な空気に反発し、能楽堂を飛び出した。庶民の祭や祝い事に出かけ、戦後は学校に出向いて演じてきた。「お豆腐狂言」と言われるゆえんである。その茂山千五郎家に次男として生まれた茂山千之丞さんは、狂言界の異端児とも呼ばれる。古典芸能としての狂言を演じる一方で、歌舞伎、新劇、ドラマ、映画に出演。オペラの演出も手がけてきた。80歳を過ぎた今でも狂言の新しい可能性に挑み続ける茂山千之丞さんに狂言の魅力と可能性を聞く。


出会いー私のリクリエーションー
●岩波ホール総支配人 高野悦子

映画は私の人生

「リクリエーションとは、リ・クリエイト、明日への生きる意欲を〈再創造〉すること」、日本のミニシアターの草分け的存在、岩波ホールの総支配人、高野悦子氏が映画と出会ったのは、大学の恩師、南博氏のこの一言が始まりだった。娯楽ではなく、再創造。その言葉が後に60年近く経った現在でも、高野氏の映画人生の根底に流れるものとなる。フランスへの留学、岩波ホールでの仕事、母の介護─彼女にとっては、そのどれもが出会い。自分を見放さず、可能性を否定しないところに、新たな道が拓けてくる。高野氏の人生はまさに、物事すべてを出会いとして来たものだった。



私は何人(なにじん)でもない
●国立民族学博物館助教授 陳天璽

「愛国心」は「評価」するものか

 現在、「愛国心」についてさまざま交わされている。そして、複数の小学校では、愛国心を3段階に判別して評価しているという。そもそも愛国心とは他人が評価すべきものか、できるものなのか。陳さんは約30年間、無国籍という立場だった。そして、30年間国とは何か、国籍とは何か、民族とは何かと問い続けた。彼女は答えを出した「自分は自分である」と。国を愛するために、まず必要なことは「自分とは何か」と知ることではないだろうか。そこはおさえられているのか。十分議論されているのだろうか。


「たかが借金」で死なせない
●弁護士 宇都宮建児      

違法金利で貸し続ける大手消費者金融

 現在、約2200万人の人々が消費者金融を利用している。消費者金融は「グレーゾーン金利」と呼ばれる実質的には違法な金利で金を貸している。法の「盲点」を突き、弱者を食い物にする企業が社会に跋扈している。宇都宮健児弁護士は、弁護士の本分としてこの現状と戦い、借金に苦しむ多くの人々を救っている。それは「たかが借金で死なせない」という断固たる決意がそうさせている。


赤字だから改革できた
●株式会社パストラル代表取締役社長 小橋暢之

お役所体質をぶち壊した覚悟

 親方日の丸的な経営体質から自己責任の経営体への変革を成し遂げた「虎ノ門パストラルホテル」初代社長の小橋暢之氏。
 彼は、東京ホテル戦争のあおりを受け赤字に転落したホテルを、生き残りを懸けた抜本的な組織改革で短期間によみがえらせ、現在業界売上トップ100社の中にランクされるホテルに変貌させた。その手腕の原点には、「赤字というマイナス要因をチャンスと捉え、大改革を断行できた」彼自身の膽があった?。


「本能」が解発(ひら)く生命力─近代理性による教育の限界─
●戸塚ヨットスクール校長 戸塚 宏

人間の生きる力を引き出す教育

 国際的なヨットレースで優勝経験のある戸塚宏氏が、愛知県美浜町にヨットスクールを開校したのは1976年。当初は一般の子どもを対象としたヨットスクールであったが、不登校の子どもが一日の厳しい訓練によって学校へ行きだしたのをきっかけに、口コミやマスコミの報道により、情緒障害児の更正施設のような状態となる。家庭内暴力が社会問題と化し、教育の現状に疑問が投げかけられた頃であった。全国各地から情緒障害の子どもが大挙して押し寄せ、目覚ましい成果を上げ続けたヨットスクールだったが、訓練生の死亡事故を機に状況は一転。マスコミによるバッシングが始まり、検察側の見解も業務過失致死から傷害致死へと変化。世に言う「戸塚ヨットスクール事件」である。4月に刑期を終えてスクールに復帰してきた戸塚氏に、獄中で練り上げたといわれる教育論と「体罰は教育」の真意を聞く。



【連載】
魂の独立宣言
視点は主語を決定する<2>
●表現教育者 宮川俊彦
学び舎の窓から<2>
「夏」が来れば……思い出す
●教育実践『響の会』会長 角田 明
お墓参りは楽しい<49>
ケネディ大統領
死後43年が経った今でも、謎を含んだ暗殺にはさまざまな憶測が飛び交う。が、ひとつだけ確かなことは、あの事件によって「希望」までが葬られたことだ。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
黙さず語らん<18>
心の棲家の言葉
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論<39>
言論を封殺する「新たな全体主義」
●明星大学教授・埼玉県教育委員会委員長職務代理者 高橋史朗
【グラビア】
COSMOGRAPHY ●日本画家 千住 博
日に晒され風に吹かれ<125> ●写真家 浅井愼平
一眼の彼方<7> ●フォト・ジャーナリスト 井上和博
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<74>
薬師岳 ー水没した信仰の村ー
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<15>
武田信玄 筋を通す人間を重んじよ
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<20>
「できない理由」を並べない
●椅子バスケットボール選手 神保康広
リーダーの要諦『貞観政要』を読む<最終回>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
にっぽん人情小噺<7>
「八十歳の冒険」
●落語家 三遊亭鳳豊
●表紙写真・大橋弘




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