2006年1月号
日本人の心の中に息づく「野生」を直観する令辰(とき)
初春(はつはる)の 初子(はつね)の今日(けふ)の 玉(たま)箒(ばはき) 
手に取るからに 揺(ゆ)らく 玉の緒(を)
(万葉集・巻二〇・四四九三)
 改歳(かいさい)を寿(ことほ)ぎ謹んでお慶び申し上げます。

 そもそも人間存在の本質は「野生」である……。
 文明は、人間の持つ「野生」、すなわちその生命力と英知と具体的、精密な科学的思考によってもたらされた「生き残り」の力を源泉とするものだ……。
 人類は、厳しい大自然の猛威の前に生き残りを賭けて「野生」の英知を拓き、この地球上に生き残り、文明を創出した。だが、わずか一パーセントの人類の歴史によって作られた文明が、人間から次第に野生を駆逐し、ついに、人間から生きる力と人間性を収奪するという矛盾を引き起こしている。
 この事実を、私たち日本人はいま、どう受け止め、どう判断し、どう対処すべきなのか、が喫緊の問題なのだ……。
【特集】野生復活!
野生って、とっても自由だよ
●佐藤勝彦

生き方そのものが野生であり自由人
 本来、人間に備わっているはずの自由というものがある。それを生かしてみよう。おてんとさん、自然、宇宙の意志、それらと自分自身は直結しているのだと感じることができれば、平和、愛、慈悲などに必然的に心を向けていくはず。危険も、落ち込みも、競争も、避けてはいけない人間としての野生であり、それらがそのまま自由であることの証でもある。絵を描き、器を作り、彫刻し、書を書き、ピアノ演奏をする佐藤勝彦氏は、「肩書き」はない、と言った。
「焼酎の古里」、風土と共に生きる
●大口酒造協業組合

郷土を愛する人々の心
 何百年もの間、南九州を中心に愛されてきた芋焼酎。一昨年、その芋焼酎が注文に応じられないほど異常な全国的ブームとなった。かつては造っても造っても売れなかったため、「焼酎の名前憎し」と呼び名を変える動きもあったという。昭和50年代の第一次ブームを皮切りに第四次ブームを迎え、いまや日本を代表する蒸留酒と認められつつある焼酎だが、ここへくるまでには先人たちのたゆまぬ努力と挑戦があった。
35年前、11軒の造り酒屋が1つとなって現在の「黒ブーム(黒麹を使った芋焼酎)」のさきがけを果たした鹿児島県大口酒造協業組合を訪ねた。(本格焼酎のおいしい飲み方は見逃せない)。


方言がなくなるとふるさとがなくなる
●与論民俗村創設者 菊 千代

方言は島の宝
 菊千代さんは、40年かけて島の方言を集めた。それは「方言がなくなるとふるさとがなくなる」という危機感から起こした行動だった。集めた言葉は1万5000語を超えた。歴史や風土から生み出された方言。菊さんが集めたものは1万5000通りの「島の営み」だった。


自分と向き合わせた「罪悪感」
●脚本家 オスカー・トレス

「罪悪感」からは逃げられない
 「家族や友人を捨てて、自分だけが生き残ってしまった」。脚本家オスカー・トレス氏は深い罪悪感に囚われていた。内戦が激化するエルサルバドルから14歳のときたった一人で、アメリカに脱出した。戦火に怯える暮らしは遠のいた。しかし、「自分のような人間が人を愛したり愛されたりする資格はない」という罪悪感が心の平和をもたらさなかった。彼が罪悪感から解放されたのは脱出から18年後。自身の体験を基にした映画「イノセント・ボイス-12歳の戦場−」の脚本を書いたからだった。それは自分自身から逃げずに、正面から向き合うという行為だった。


身体で考える
●神戸女学院大学教授 内田 樹

「不安定」な世界だからこそ、身体の声を聴こう
 「身体感覚を高めよう」「身体感受性を鋭敏に」と言われることは、最近では珍しくなくなった。では、一体「身体感覚」とは何なのか? それを「高める」とはどういうことなのか? 武道を30年以上続けている哲学者・内田樹氏にご自身の武道の経験から感じた「身体感覚」を、私たちが日常目にする出来事と絡めながら語っていただいた。


逃げへんぞ!−告発、廃業、そして再建−
●西宮冷蔵社長 水谷洋一

社会が守らなければならない希望
 牛肉偽装事件を内部告発した。不正を働いた会社は倒産。そして、自分の会社も廃業。そんな会社を全国からの励ましが再建に向かわせた。見て見ぬふりしない、筋の通らないことには断固戦う。それが現代社会ではとても生きにくいことであることは承知の上で、あえて「逃げない」生き方を続けていく。再建を後押しした全国からの支援は、それにかすかな人間としての望みを持ちたい人々の声だったのではないか。

お墓参りは楽しい<43>
山内一豊の墓
今年からNHK大河ドラマで放映される「功名が辻」の主人公山内一豊の墓(高知市)を訪ねた。一豊が戦乱の世を生き延びることができたのは妻・千代の内助の功。ドラマと合わせて読んでいただきたい。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
【新連載】
にっぽん人情小噺
「大きくなった」
忘れ去られた「日本の人情」がここに。
●落語家 三遊亭鳳豊
【新連載】
一眼の彼方
国内外の現実世界を1枚の写真で。
●フォト・ジャーナリスト 井上和博
「まほろば」の循環史観<18>
地球「まほろば」考I
─地球に宿された大いなる循環の生命力─
●四天王寺国際仏教大学客員教授・
 弁護士 中島尚志
黙さず語らん<12>
セミとトンボ(感性の哲学)
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論<32>
キレる脳、ひきこもる脳を鍛える
?セロトニン欠乏脳という現代習慣病
●東邦大学医学部統合生理学教授
 有田秀穂
●明星大学教授・埼玉県教育委員会委員長
 職務代理者 高橋史朗
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<119> ●写真家 浅井愼平
そのまんまの世界 ●画家・書家 佐藤勝彦
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<68>
米岳 薬師で知られた北越の山
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<9>
西郷隆盛<前編> 私欲に勝つことが成功につながる
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<14>
他人の中で生きる「ピエロ」という私
●パフォーマー ピエロのごっちくん
長田百合子の体当たり奮戦記<33>
厄介な子どもは“しゃれっ気”でやっつけろ
●エデュケイションライター
 長田百合子
リーダーの要諦<44>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
●表紙写真・佐藤勝彦氏/撮影・鶴田孝介




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