2005年12月号
独慎抄 決して人間中心の世界ではない、地球、そして天地の生命
近現代の科学・技術の発展は、人間に利便とモノの充足をもたらしはしたが、人間の本質的価値としての「意味や成長」をもたらしえたのだろうか……。
 自由、そして平等、民主主義、資本主義という近現代を象徴する思想やシステムは人類に大いなる貢献をしたが、その一方で、人間の業病(ごうびょう)とでもいうべき自己中心的な我執や欲望を正当化させ、その際限なき肥大に火をつけてしまった。それがために人間は、私たちの根底を支える唯一の生命の惑星「地球」を、自らの手による地球規模の大汚染、大破壊、大枯渇によって崩壊寸前の危機的状況に陥らせているのである……。
【特集】あなたと私
限りない「開け」に開かれて 
●京都大学名誉教授 上田閑照

「自分探し」では見つからない「自分」
 執着を捨て、大海原や何もない空間のような開かれた心の置き場所に立って、そこで何かに没頭して与えられた役割を果たす。そのときに本当の自分が養われていく。決して、本当の自分はどこかほかのところにあるものでもなく、見つけるものでもなく、自分で養っていくものである。
陶工「沈壽官」として生きる 
●陶芸家 十五代沈壽官

日本人とは何か、故郷とは何か
 はるか四百年前、豊臣秀吉の朝鮮出兵時に薩摩藩によって連行された職人集団があった。彼らは藩の庇護を受けながら美しい焼き物を生み出し、幕末には「サツマウエア」の名をヨーロッパに轟かせた。しかし、明治以降、日本人によるいわれなき差別に苦しむようになる。司馬遼太郎は『故郷忘じがたく候』において、歴史に翻弄されながらもこの国に根を張って生き抜き、自らの存在を証明し続けてきた悲しいまでの強さを十四代沈寿官氏に重ねて主人公として描いて見せた。
 思えば、私たちのはるか遠い祖先は、日本という列島に移り住み、あるいはそれを受け容れながら融合し、日本という国を作りあげてきた。日本人が忘れかけた大切なものとはー。薩摩焼・宗家を7年前に襲名した若き十五代沈寿官氏に聞く。


光と影 表裏一体で成る世界 
●影絵作家 藤城清治

人生は光と影そのもの
 81歳になる影絵作家・藤城清治氏は、戦後から独自のスタイルで影絵を作り続けてきた。藤城氏の影絵から妥協はいっさい見られない。一枚一枚の葉には誠実さが込められ、そこにはごまかしは存在しない。
 成功と失敗、喜びと悲しみ、生と死、そしてあなたと私……。世の中はどちらか一方で成り立っているのではない。互いに繋がり、それぞれを包み込んでいる。
 藤城氏は言う。「影絵作家という肩書に違和感を感じてしまうんですよ」と。氏にとっては、影を追究することは、光を追究すること。影と光も表裏一体なのである。


“カブトムシおじさん”の意地 循環農法と「食の安全」に命を賭ける 
●酪農家 内田龍司 

カブトムシと共に生きる男の人生
 昨年秋、「カブトムシ特区」の申請をきっかけに一躍有名になった福岡県久留米市の酪農家・内田龍司さん。愛知万博では「地球市民村」でカブトムシを提供し、話題をさらった。多くの子どもたちから「カブトムシおじさん」と親しまれる内田さんだが、それは一面の姿だった。その心のうちには燃えるような思いが渦巻いていた。
 今年8月、「久留米自然かぶと虫牧場」に内田龍司さんを訪ね、その一日を追った。


生きる安心感を生み出すもの 
●宇宙物理学者 桜井邦朋  ●児童文学評論家・翻訳家 清水眞砂子

身近なところにある「生きるうながし」
 生きることが、とても不安な世の中。どうしたら安心して生きていけるのだろうか。身近なところに友人や本があるじゃないかと思えたり、あるいは、自分がいま生きていることは偶然の積み重ねなのだと気づいたり、どんなに愛する人であってもいつ死ぬか分からないことを自覚したり、そういうことが案外、安心感を生み出すのではないだろうか。逆に言えば、生きることは、そういうものからの支えによるものであったりもする。

お墓参りは楽しい<42>
山古志村の墓地
筆者の出身地・新潟で起きた中越地震の最大の被災地である山古志村を、一年後に訪ねた。家屋は倒れたままだったが、お墓はほぼ立て直されていた。村人は、ご先祖様の家を優先したのだ。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
「まほろば」の循環史観<17>
まほろばの国の「産霊の民」V
「野生の思考」でみる日本文明発祥説話としての天孫降臨
●四天王寺国際仏教大学客員教授・
 弁護士 中島尚志
黙さず語らん<11>
余裕の哲学
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論<32>
脳科学に基づいた親教育が始まる
●埼玉県教育委員会委員長職務代理者・
 明星大学教授 高橋史朗
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<118> ●写真家 浅井愼平
風と光の中で<33>最終回 北海道 大雪山
●文 千歳栄
 写真 イシイヨシハル
そのまんまの世界 ●画家・書家 佐藤勝彦
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<67>
北岳 歌枕の山甲斐の白根
●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<8>
松下幸之助 多くの人の知恵を事業に生かす
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<13>学者は「現場百回」 ●長岡技術科学大学講師 上村靖司
長田百合子の体当たり奮戦記<32>
「脚本作り」も楽じゃない
●エデュケイションライター
 長田百合子
リーダーの要諦<43>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
●表紙写真 上田閑照氏




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