2005年7月号
独慎抄 「私は私の主人公─私は私を創っていく責任者」
けさ、学校に来がけに
母と言いあいをした。
ぼくは、どうにでもなれと、
母をボロクソに言い負かしてやった。
母が困っていた。
そしたら、学校で、昼になって、
母の入れてくれた弁当のふたをあけたら、
ぼくの好きなかつおぶしが
パラパラとふりかけてあった。
おいしそうに匂っていた。
それを見たら、
ぼくは、けさのことが思い出されて
後悔した。
母は、いまごろ
さみしい心で昼ごはん食べているだろうか
と思うと
すまない心が、
ぐいぐい
込みあげてきた。

 平成3年4月に亡くなられた「求道の教育実践家」東井義雄氏が自著『「いのち」の教え』(佼成出版社刊)の中で紹介している、ある児童が書いた詩である。

 この詩には、私たちの戻るべき「人間らしい関係の家」が描かれている。まず、この詩を書いているときの児童が遠望している「私という存在」。その私という存在を生み出し、愛情いっぱいに育て、やんちゃをいって困らせる私のすべてを受け入れている「母という存在」を通した私。そして、悪態をついた私の弁当に、それでも大好きな「かつお」をふりかけてくれた母との深い、深い絆を通して見えてきた私。見る私、行う私、そして考える私。この3つの自分が1つにむすび合って豊かな、瑞々しい私が育てられていく……。
【特集】
見る「私」 行う「私」
 考える「私」
「志」ー日本のフォルクスガイスト
●京都大学教授 中西輝政
●原田武夫国際戦略情報研究所代表
 前外務省北東アジア課課長補佐 原田武夫

日本人に足りないものは「志」
 日本の外務省は、なぜ真の外交を果たすことができていないのか。なぜ国連安保理の常任理事国入りの議論は進まないのか。日本の諸外国との本質的関係はどこにあるのか。今、日本にとって必要な情報戦略が、なぜ構築できないのか。そして、それらの根源的な原因は何か。「日本の建て直し」のために外務省を辞した草莽(そうもう)の士と、歴史的文明的観点から日本のありようを論じる国際関係・国際政治の権威による日本人の目覚めを促す対談。
心なら、さし上げられる
●「森のイスキア」主宰 佐藤初女

関わり方を深くする「いのち」への気づき
 青森県岩木山の麓に建つ「森のイスキア」。ここには、心や体を病んだ人々が全国から訪れる。主宰者・佐藤初女さんは、ただただ心を尽してご飯をつくり、訪ねてくる人々の話を聞いている。初女さんのつくるご飯が人々の心を開くのは、食材を単なる食材と思わず、「いのち」として慈しむように優しく扱っている姿勢を感じるからではないだろうか。初女さんのような思いですべての命あるものに接することができれば、私たちのあらゆるものとの関わり方にも変化があらわれるのかもしれない。


分身─飛翔するタカは私
●鷹匠 松原英俊

タカが導いた人生
 松原英俊氏の仕事は鷹匠。鷹匠とは山に分け入り、相棒のタカを使ってウサギなどの小動物を獲る人々のことを指す。日本で鷹匠を生業にしているのは松原氏ただ一人になってしまった。鷹匠は冬の間だけの仕事。獲物を求めて東北の雪山で野宿する日も度々あるという。雪崩や滑落など命を失う危険が伴う過酷な仕事で得た年収は、100万円程度にしかならないという。しかし、松原氏は「鷹匠が私でいられる唯一の仕事」と言い切る。自分が自分らしくいられるために、必要なものとは。


光を観せる人でありたい
●日本旅行添乗員 平田進也

「平田進子ちゃん」は私の背骨
 平田進也氏は関西では有名な「カリスマ添乗員」。ツアー旅行の宴会では女装し「平田進子ちゃん」になりきって参加客を楽しませる。女装してまで客の相手をする姿に「見苦しい」「アホや」という冷ややかな声もあるという。しかし平田氏は「アホこそ最大の褒め言葉」とやめることは露とも思わない。それは「進子ちゃん」が自分自身を支える背骨だから。その背骨は「人を喜ばせたい」という思いでつくられているものだった。


起こるべくして起きた大惨事─JR福知山線列車転覆脱線事故
●弁護士 小寺 一矢

被害者家族が訴える「恐るべき日本の病理」
 「あなたも、私も、日本人一人ひとりに責任があるんです」
「世界一安全で正確な交通機関」という私たち日本人の誇りと信頼を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまったJR福知山線の列車転覆脱線事故で、妹さんを亡くされた弁護士の小寺一矢氏は、マスコミの取材に対して、深い悲しみをこらえながら、そう訴えた。この言葉にこめられた現代社会に対する痛烈な諫言を私たちは決して見逃すべきではない……。

お墓参りは楽しい<38>
芥川龍之介
芥川が生前残した(と言われる)、年表にも書かれていない一枚の短冊。これについて尋ねようと、芥川賞作家である著者が墓前を訪れる。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
「まほろば」の循環史観<13>
まほろばの国の「産霊の民」I
モンスーンに抱かれた豊穣なる島嶼の国
●四天王寺国際仏教大学客員教授・
 弁護士 中島尚志
黙さず語らん<6>
祈りという財産
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論
岡本道雄、未来への伝言
●元京都大学総長 岡本道雄
●埼玉県教育委員会委員・
 明星大学教授 高橋史朗
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<113> ●写真家 浅井愼平
風と光の中で<29>出羽三山(2)
●文 千歳栄
 写真 イシイヨシハル
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<62> 天城山 ●作家・文芸評論家 高橋千劔破
人生の指針を残した偉人たち<3>
二宮尊徳 着実に業績を上げていこう
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<8>目の前にはいつも“ラストゲーム” ●国際女子主審・一級審判員
 大岩真由美
そのまんまの世界 ●画家・書家 佐藤勝彦
長田百合子の体当たり奮戦記<27>
異臭放つ少女、イケメンにコロリ
●エデュケイションライター
 長田百合子
リーダーの要諦<38>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
●表紙・原田武夫氏…撮影・道岸勝一




当サイトに掲載されている文章、写真、イラスト等はMOKU出版株式会社に著作権があります。
無断で複製、譲渡、貸与、転載することを固く禁じます。

(C) 2006 MOKU Inc. All rights Reserved.