2005年4月号
巻頭言 「春を尋ねて春を見ない「天動説」な人間」
尽日(じんじつ) 春を尋ねて春を見ず
芒鞋(ぼうあい)もて踏遍(とうへん)す隴頭(ろうとう)の雲
帰り来たり笑ふて梅花を撚(ねん)じて嗅(か)げば
春は枝頭(しとう)に在りて已(すで)に十分
(春を捜し歩いたけれども、どこにも見つからなかった。帰って、ふと梅の花の香りを嗅いだとき、わかった。春は、すでにここにあったのだ。)
自己中心で、すべての問題を他のせいにするのが私たちだけれども、実は、問題は自分の足元、もっといえば、自分自身の中にある。大切なことも、他に求めるのではなく、自分を深く探求することによって気づいていくもの。「天動説」なままでは春はやってこない。
【特集】
「天動説」な人間
どうする、この崩壊現象を!
─浮遊する学校と家庭─
学力低下よりも深刻な現場からの叫び
●尾道市立土堂小学校校長 陰山英男
●エデュケイションライター 長田百合子


 OECD(経済協力開発機構)の調査で日本の子どもの学力が一段と下がったと騒がれ、文部科学省は「ゆとり教育」路線の転換を決定した。しかし、その裏で崩壊しつつある教育現場の実態をどれほどの人が知っているのか。現場感覚なき行政、あるいは教育論は単なる「天動説」にすぎない。教育現場は逃れることのできない「地動説」的現実の中で、親が頽れ、子がシラけ、そして社会が崩壊していく……。
子どもから学力・体力・感性を引き出し注目を浴びる「陰山メソッド」の陰山英男氏と、不登校・ひきこもりの家庭に乗り込み、「メンタルケア」という独自の手法で親子関係を正している長田百合子氏が、学校と家庭という現場から現代日本を斬る!
人生すべて“借り物”なんです
ただひたすらに職人であり続けること
●曲輪・漆芸職人(重要無形文化財「きゅう漆」保持者)大西 勲

 大西少年は発音が不自由で、いじめられ、友達もいなかった。中学卒業後、職を転々とした。やさしくされると怖くなって逃げた。職人の世界に入っても納得できないことはやらない、「ものをつくることが職人」と賞や社会の目は気にしなかった。ひたすら職人としての仕事を突き詰めていった。いつしか周りから認められ、「人間国宝」となった。「素材が道具を決める。その道具を動かしているだけ。知恵も道具もすべてだれかの借り物です」。それが大西さんの口癖。


思い出までも修理したい
「修理すること」の意味とは
●万年筆修理職人 久保幸平

 現在は大量消費社会。モノに対する愛着は薄れ、壊れたものは次々と買い換えられていく。かつて高級筆記具として、またプレゼントの定番としてその地位が確立されていた万年筆も例外ではない。万年筆に限らず、私たちはモノに付随する大切な「気持ち」を顧みないままに、買い換えを繰り返してはいないだろうか。日本でただ一人の万年筆の修理職人である久保氏は言う。「私は万年筆だけでなく、それについてくる思い出までも修理したいんです」と。


意味と価値を含めた科学研究を
科学は本当に万能なのか?
●東京大学大学院教授 金森 修

 私たちの生活は便利である。遠い場所でも容易に行ける。寒くなれば暖房があり、暑くなればクーラーがある。それは発達を続ける科学がもたらした恩恵。この恩恵が私たちの生活を豊かにしたのは間違いない。
 しかし、一方で遺伝子組み換え食品やクローン人間など科学の領域は「いのち」にまで踏み込んできた。私たちは科学の力を盲信してはいないだろうか。科学がなんでも解決してくれると頼ってはいないだろうか。
 「科学は本当に万能ですか」─この質問に金森氏が答えてくれた。


「ともに生きる」価値観の危機
─医療現場から見える国民を幸福にしないニッポン─
「貧乏人は死ね」と言うのか!
●済生会栗橋病院副院長・医療制度研究会幹事 本田 宏


 「医療費は高い」「高齢化はますます医療費を押し上げる」「医療費が赤字財政を圧迫している」と思っている。ところが、医療界の内実を知り、海外との比較を通じてわかってくることは、われわれが常識として認識していることが、実は、そう思わせているものがあるということ。そして、いま、国民だれもが安心して医療を受けられるこのシステムが根底から覆されるような改革が進んでいる。医療という民主主義の根幹の一つが危機にある現状を一人の医師が訴える。


味噌にも意志がある
「天人合作」の味噌が生むものとは?
●株式会社はるこま屋代表取締役 五月女清以智

 私たちは「食べる」ということに関して、どのように考えているだろうか。経済的には豊かになり、様々な食べ物が手に入るようになった日本だが、「食べる」ことの根本を忘れてしまってはいないだろうか。
 はるこま屋代表取締役で元編集者の五月女清以智氏は、食べ物とはすなわちいのちだと語る。素材そのもののいのちでもあり、私たちのいのちをもつくってくれるものである。たとえどれほど小さなものであっても、生きているいのちである以上、人間の力の及ばないものがある。こういったことを、はるこま屋の味噌は私たちに教えてくれる。

お墓参りは楽しい<35> 秋山好古
司馬遼太郎の『坂の上の雲』で知られる秋山兄弟の兄・好古のお墓参りに訪れた新井氏が、その地松山で、一つの歌詞をつくった。中高年夫婦のラブソング。お墓まで二人で一緒に……、そんな思いが込められている。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
「まほろば」の循環史観<10>
神々の棲む国の文明 II
オオクニヌシ説話が私たちに語りかけてくる「悲」の世界
●四天王寺国際仏教大学客員教授・
 弁護士 中島尚志
黙さず語らん<3>
言葉という葉っぱ
●作家 藤本義一
高橋史朗の第三の教育論<特別鼎談> 後編
子どもの脳をどう守り、育てるか
●日本大学教授 森 昭雄
●埼玉県川口市立東本郷小学校
 校長 桑原清四郎
●埼玉県教育委員会委員・
 明星大学 教授 高橋史朗
【書籍部門第一弾記念企画】
「AQ」へ辿り着くまでの道程III
自分を変えて、まわりを変える「AQ 活性の魔術」
●茨城大学講師 笠井よしつぐ
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<110> ●写真家 浅井愼平
風と光の中で<26>宮城
●文 千歳栄
 写真 イシイヨシハル
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<59> 笠ヶ岳 ●作家・文芸評論家 高橋千劔破
歴史を変えた決断と名言<最終回>
自分に見合った仕事を見つけることが人生を楽しくする
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<5>
やっと出合えた僕の分身
●クレイイラストレーター
 イシカワコウイチロウ
長田百合子の体当たり奮戦記<24>
狂った子ども
●エデュケイションライター
 長田百合子
リーダーの要諦<35>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
●表紙・陰山英男氏……撮影・井上和博




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