2005年3月号
巻頭言 「悲の心」を褥として生まれ落ち、「慈の心」をよすがとして育つ
 人間ならだれもが「悲しみ」や「苦しみ」は避けて通りたい。が、悲しみや苦しみを経験した者だけが他者の悲しみや苦しみに同感し、その他者を癒すことができる。これを「悲」といい、求められなくても相手にそっと手を添える思いやりを「慈」という。「悲」を失うことは「慈」を失うことにほかならない。「人生の妙味」は、悲しみ、苦しみを連れ添って慈しみに満たされたところにある。
【特集】
「悲しみ」を連れ添う
「悲」に生きる!
映画「わらびのこう 蕨野行」が問いかける現代日本人考

忘れられた日本人の死生観を描く
●女優 市原悦子  ●映画監督 恩地日出夫
 
映画「わらびのこう 蕨野行」の監督と主人公役の女優が、日本人の死生観について語り合った。自分の意志で生きて死んでいけることほど幸せなことはないんじゃないか、と恩地監督は言い、蕨野の世界で死ぬまで生きるんだと実感し、生きること死ぬことに対する思いの深さに表現者として思い至ったと市原さんは言う。
【映画「わらびのこう 蕨野行」に関するお問い合わせ】
シネマワーク:075(255)5212
シネマワーク:http://www.cinemawork.co.jp/
わらびのこう:http://www.genfukei.or.jp/warabi/


夫婦が創り出した1778日の「日常」
作家が考えた「妻のためにできること」
●作家 眉村 卓
 
「自分は妻のためになにをしてやれるのだろうか」。作家・眉村卓氏は病床の妻のために物語を綴り続けた。一日一本の短い小説は妻が亡くなる日まで1778話も続いた。この行為は作家の愛情表現であり、夫と妻が創り出した日常生活でもあった。
引き裂かれる「心のへその緒」
─ぼく、生まれてきていけなかったの?
保育の現場からの切実なメッセージ

●江戸川双葉幼稚園園長 菅原久子
 テレビの前に長時間転がされる赤ん坊、「教」から「競」、そして「狂」へ走る親……。乳幼児期という人間が最も激しい発達をとげる大事な時期に親と子の間に異変が生じている。三十年余り保育の現場で親子を見つめてきた幼稚園園長の実感である。虐待、少年犯罪、学級崩壊、そして少子化といった日本社会の問題の深層に横たわる問題に保育の現場から鋭く迫る。


娘の死から始まったかかわり
あっ子ちゃんが遺したメッセージ
●教研学習社代表・前埼玉県立衛生短期大学非常勤講師 植木 誠
 
22年前に白血病に侵され11歳で亡くなったあっ子ちゃんは9冊の日記を遺した。両親のこと、友人のこと、病気のこと…。日記にはあっ子ちゃんの短い人生が凝縮されていた。自分のことより他人のことをいちばんに気遣う性格が日記から読み取れた。日記を読んだ父・植木誠氏はこの日記を世に出すことを誓った。教職を辞し、出版社を設立してあっ子ちゃんの本を出した。「命の尊さ」を訴えるために全国各地で百回の講演も開いた。植木を突き動かす大きな理由はほかにもあった。


無力という「力」
苦しむ人々を目の前にして、私たちにできることは?
●横浜甦生病院ホスピス病棟長 小澤竹俊
 ホスピス。この言葉を見かけることは、最近では珍しくなくなった。一般の病院のように延命治療を目的とした病院ではなく、死を目の前にして、いかに生きるかと考えることの手伝いをするような病院である。ここで働く医師は、死を目の前にして苦しむ患者さんを技術で助けることはできない、そういった自分の無力を感じながらも、看取りの医療を続けた小澤医師が辿り着いた一つの答え、無力のもつ「力」とは……。


安らぎを知らない少年少女たちへ
子どもたちの孤独感にどう寄り添うか
●真宗大谷派・成真寺住職 土屋昭之
 20年余の教師生活を経て、保護司も経験した住職が子どもたちのために仏教を説く本を書いた。『少年少女の仏教−生きるって、なに?』は「いきいきと生きるには、どうすればよいのか」をテーマにしている。子どもたちには、本当に好きな大人がいるのだろうかと懸念する土屋住職は、大人の子どもへの寄り添い方にも問題はないかと疑問を呈する。

黙さず語らん<2>
ココロを探す
「心という字は、どうしてココロというのか」という孫の疑問から、ココロ探しを始めた。そしてたどり着いた答えは「コルコル→ココル→ココロ」。大脳から発したココロ、というのが藤本説だ。
●作家 藤本義一
お墓参りは楽しい<34> マン・レイ
 作家・新井満氏のお墓参りのエッセイ。今回は写真家でアーチストの「マン・レイ」。新井氏いわく、「僕の親戚。新井マン・レイだから」。……。
寒いジョークはともかく、マン・レイの最高傑作とされるオブジェ「贈り物」の誕生秘話?
を展開。その盗まれた作品を新井氏自身の絵筆で再現した絵も見逃せない。
●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
「まほろば」の循環史観<9>
神々の棲む国の文明 I
「オオクニヌシ説話と始原的日本文明の発生」序説
●四天王寺国際仏教大学教授・
 弁護士 中島尚志
高橋史朗の第三の教育論<特別鼎談> 前編
子どもの脳が危ない!
人間らしさを奪うゲーム脳の恐怖
●日本大学教授 森 昭雄
●埼玉県川口市立東本郷小学校
 校長 桑原清四郎
●埼玉県教育委員会委員・
 明星大学 教授 高橋史朗
【書籍部門第一弾記念企画】
「AQ」へ辿り着くまでの道程II
自己を拓く「ヒューマン・ステップ」の六段階
●茨城大学講師 笠井よしつぐ
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<109> ●写真家 浅井愼平
風と光の中で<25>越後
●文 千歳栄
 写真 イシイヨシハル
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<58> 甲斐駒ヶ岳 ●作家・文芸評論家 高橋千劔破
歴史を変えた決断と名言<37>
才智を誇ってはならない
●明治学院大学教授 武光誠
【好評連載】
未知なる輝き<4>
「古民家」という襷を繋ぐ
●大工・「古民家工房」
 代表 高橋義智
長田百合子の体当たり奮戦記<23>
“ピンクバッタ”の恐怖
●エデュケイションライター
 長田百合子
リーダーの要諦<34>
『貞観政要』を読む
●中国思想史家 疋田啓佑
【読者の作文コーナー】
大事な人に伝えたい心のメッセージ
●表紙・市原悦子氏……撮影・井上和博




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