2004年9月号
巻頭言 永遠のテーマ「家族」-中野孝次さんの死を悼む
【特集】家族
「家族」そして「社会」のプリンシプル
●ラホイヤアレルギー免疫研究所名誉所長 石坂公成
●JT生命誌研究館館長 中村桂子

「照子との結婚は、私の人生で最大の成功であった」と独白するのは、滞米生活三十五年に及ぶ研究生活で日本人初のアメリカ免疫学会会長を務め、日本国際賞など内外から数々の栄誉を受けた免疫学の世界的権威・石坂公成氏である。現在、石坂氏は病に倒れた世界的医学者である照子夫人の看病を人生のプライオリティ・ナンバーワンとしながら、サイエンティストとしての仕事をまっとうしようとしている。「照子のおかげで自分のやりたいことをやらせてもらったが、照子も一生を通じてしたいことをし、生きたいように生きたと思う。しかも我々が四十五年間にやってきた仕事のなかには、二人でやったからうまくいったと思われることも少なくない」という石坂氏の歩いてきた道にこそ、時代が変わったとはいえ、日本人が日本人として守らなければならない「プリンシプル」があるはずである。その石坂夫妻を同じ研究者として心から尊敬する一方、「生命誌」という新しい知を通して「生命・人間・自然」について考え、二十一世紀の世界観を模索する中村桂子氏もまた「生活と学問(仕事)の融合」を実践してきた。顧みていま、「いのち」を「カネ」としてしか換算できないような殺伐とした風潮が蔓延する日本社会において、最も求められていることは、「まっとうな人間として生きる」という視点であろう。それは教育の問題であり、その根底に流れるのは「家族」の問題である。二人の国際的サイエンティストが自らの視点を通して語り合う「現代日本考」「現代家族考」。
冷泉家の家訓
●冷泉家二十五代夫人 冷泉貴実子


はるか、藤原俊成・定家を祖とする「和歌の家」冷泉家。ほとんどの公家が先祖伝来の有形無形の文化を手放してきた中にあって、当主から当主へと、あらゆる努力を傾注し、夥しい数の古典籍類を守り伝えてきた。近年、その蔵が公開され、多くの専門家を驚かせ、「奇跡」と言わしめた。俊成自筆の『古来風躰抄』や、定家の筆になる『古今和歌集』など国宝五件、重要文化財四十三件。点数にして千を優に超える日本の宝の番人でもある。その冷泉家に生まれ、和歌の道を伝え続ける冷泉貴実子さんに聞く、「歴史と文化を背負った家族像」─


ずっと昔に残してきた僕の捜しもの
●作家 久世光彦


子どものころ、家の中にあった日だまり、そして暗がり。友だちとはしゃいで遊んだ明るい空き地や神社も、夕暮れとともに、薄気味の悪い場所へと暗転する。昔、家や町にあったさまざまな表情、明と暗、そして、匂いや音…。文明の発達とともに、姿を消したものの中に、子どもたちを、家族を育てたものがあったのではないだろうか。


苦しさを分かち合う存在
●聖路加国際病院小児科部長・副院長 細谷亮太


人は生まれた瞬間からだれかしらの家族となる。しかし、私たちは普段、家族というものをあまり意識することはない。「『家族とはなんだろう?』と問い続けることに意味がある」 と聖路加国際病院小児科部長、細谷亮太氏は言う。小児がんを専門とする氏が、三十年間で見送った子どもたちは二百人を数える。明日の命すらわからない宿命を背負った子どもたちとその家族の苦しさをともに分かち合ってきた細谷氏が見た「家族」とは─。

あなたが選ぶ「日々の営み」
●安田女子大学教授 春日キスヨ


あなたにとって家族とはなに? 一緒に一つ屋根の下で暮らすこと?転勤や一人暮らしでバラバラになったら家族ではない?あなたにとっての家族はあなたが決めるもの。あなたが向き合っていくもの。あなた自身が紡いでいく関係。それが「家族」。


それでもつくる「家族」
●脚本家 清水有生


家族とはなんだろうか。理想の家族は存在するのだろうか。脚本家の清水有生氏はかつて、ケースワーカーとして「崩壊する家族」を見つめつづけた。彼は子どもを虐待する親、親にひどい仕打ちを受けた子どもでも家族に対する愛情は必ず存在すると話す。そして清水氏はいま、現場で学んだ家族の在り方を、脚本家としてその思いを文字に乗せる。「家族は日々の営みそのもの」。彼の言葉は家族に「かたち」を求めつづける私たちに重く突き刺さる。


矛盾を受容する関係
●児童文学評論家・翻訳家 清水眞砂子


家族は、その存在が近いゆえに、愛情だけではなく憎悪や軋轢や反発も生まれる。決して、居心地のよさだけをもたらしてくれるわけではない。しかも、家族は外からの圧力に絶えず晒されている。そのため、その関係性の中だけでは許されていいことさえ否定されてしまう。脆くて危うい家族という関係を維持していくためには、なにが必要なのか。


オモニがつくらせたバイオリン
●バイオリン製作者 陳 昌鉉


その昔、海峡を渡った少年を支えつづけたのは故郷・韓国にいる最愛のオモニ(母)との絆だった。家族関係を築く根本でもある母と子。陳昌鉉はその関係が「だれよりも深かった」という。韓国と日本、国の違い、文化の違いはあるが親子関係は変わらない。陳親子の関係から日本人が失いかけている親子のかかわりが見えてくる。
【グラビア】
日に晒され風に吹かれ<103> ●写真家 浅井愼平
お墓参りは楽しい<28> 坂本龍馬 ●作家・日本ペンクラブ常務理事
 新井 満
風と光の中で<19>宗像
●文 千歳栄/写真 イシイヨシハル
【歴史エッセイ】
日本の名山 その歴史と文化<52>妙義山 ●作家・文芸評論家 高橋千劔破
歴史を変えた決断と名言<31>相手の意表を突いて勝利をつかめ
●明治学院大学教授 武光誠
【歴史小説】
ひとすじの道<30>小説・三島通庸
●作家 阿井景子
【好評連載】
「まほろば」の循環史観<3>
海の大八洲T『日本神話』にみる序奏としての日本人の「原意識」
●四天王寺国際仏教大学教授・弁護士
 中島尚志
長田百合子の体当たり奮戦記<17>
人は苦しんだ分、幸せになれる
●エデュケイションライター
 長田百合子
高橋史朗の第三の教育論<17>
教育基本法は教育勅語を前提に成立した
●明星大学教授 高橋史朗
植田剛彦の暴言直言一直線<16>
天才大使が残した私たち家族の宝物
●評論家 植田剛彦
ミレニアムの鼓動<54>
「ヒマラヤ鎮魂の旅」に同行したころ
●国際ジャーナリスト 菊地育三
リーダーの要諦
『貞観政要』を読む<28>
●中国思想史家 疋田啓佑
かさいよしつぐの通心簿<49>
生徒をわかせた担任の旅通信
●教育コンサルタント 笠井喜世
【ほっとニュース】
いまハワイアン・キルトがブーム




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